怪しげなプレゼント

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「蒼………お前、本当にイーチェンの事が好きなんだな。いいよな、両思いってさ……見ていて心が温かくなる」 両思いの余裕の風格がマテオの雰囲気からにじみ出ていた。エバンスの別荘で感情をあらわにした時とは明らかに違う柔らかな空気感だった。 「彼とは、ニューヨークで出会ったのか?」 「いや。出会ったのは、仕事で京都に行った時だ。彼は、観光でな」 「え?まさか」 奕辰とマテオは、ロサンゼルスに住み倒産寸前の企業に入り立て直す仕事をしていたのだという。蒼が日本にいるのを知り、たまたま依頼があった京都の企業を選んだのだ。だが、神の悪戯か 彼らが再会することはなかった。 忙しさが落ち着いたころには もう蒼は渡米し、いなかったのだ。 「ピンクや黄色、白、いろんな蓮の花が植えられていて綺麗だった」 元々、湖水が池の蓮は白一色で は派手さが無く、客の『綺麗だけどなんだか寂しい』という呟きを聞いた蒼が提案したことだった。とにかく手間のかかる作業で反対もあったが、やってみれば観光客は増え観光バスのルートに入るようになった。懐が温かくなれば人手も増やせたし、施設経営はすぐに潤っていった。 夢が叶えば、一刻も早くリアムのいるアメリカに帰りたくて仕方がなかった。お互いの会いたい気持ちは、逆にすれ違いを起こしてしまったというわけだった。 「まあ。また、ゆっくりオレの彼氏の話を聞いてくれよ。エイミーとエリックが首を長くして待ってる。5か月振りだって?心が病むほどにイーチェンに会いたかったんだな」 「マテオ…知っていたのか」 マテオは、「ほら、行ってこい」と言いながら、グリズリーの手を掴み蒼の腕をツンと押してくれた。
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