怪しげなプレゼント

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「ぁ……」 重たい頭を上げると、懐かしすぎる別荘を見つめた。 空と海のコバルトブルーがよく似合う真っ白いコンクリートの建物。茶色の煉瓦で作られた花壇には一年草の花が植えてあり、3年も主がいないというのに赤や水色のたくさんの花が揺れていた。 「よく手入れされてるな」 「ボスから、蒼を住まわせるようにと管理を任されましたが、蒼は、あんな家にいたらダメ人間になると言って独身寮に留まりました……甘えてしまうと思ったのでしょう」 フィリップが鍵を使い玄関に入ると、電気をつけた。 吹き抜けの2階天井には、木製のシーリングファンがあり、くるくると回転を始める。あの日と同じ情景、あの時と同じ場所にある ふたり分のスリッパ。 ”シャワー室は、この扉の向こうだ……” そう話しながら、こっちを見る奕辰の幻が見えてくる。 「リビングの奥に客人用の寝室があります。蒼は、そこに寝せますか?」 「そうだな。目が届く場所がいい」 奕辰とふたりの時には気づかなかったが、別荘に足を踏み入れた時から懐かしい良い匂いに包まれているのが分かった。なんだか、リビングのドアを開けた奕辰が、”帰って来たか……蒼”と現れそうなくらいに。 「イーチェン―――。イーチェン?」 「おい、蒼!そんな身体で、どこに行く」 奕辰との思い出がありすぎるリビングに入るとヨタつきながら彼を探して回った。1階のドアというドアを開けて回ると、危ないと言われながらも螺旋階段を上り2階の部屋を探した。 そして一番奥のドアを開けた。
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