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「立夏は…離婚、したいのかな?俺はしたくない。浮気は事実でそれは消せない。立夏の気の済むまで何度でも謝る!」
「いいよ、もう。謝られてばかりも、飽きる。ハルさんの子供がここにいる、分かった時は…嬉しかった。本当に本当に嬉しかった。……産む以外考えないくらい、大変なのは分かっていたけど、産むしか考えなかった。ハルさんの子だから、私とハルさんの子だから。結局そうなる。…………結局…ハルさんが何をしても…心の底から嫌いになれない。だから、家にいるのが辛かった。好きなのに…ハルさんの気持ちは、前橋さんに向かってて、見送るの…限界だった。一方通行の気持ちは、夫婦なのに辛過ぎる。」
「ごめん、でも!前橋さんに会いに行ってたつもりはなくて、結果、そうだったって今は分かるけど……。」
「うん。襲われた、時も…聞いて欲しかった。誰に何をされたか、知りたくないだろうけど、傷を…共有して欲しかった。夫婦だから。」
「うん…そうだね。立夏の口から辛い体験を言わせたくなくて聞きたくなくて、なかった事にしようとした。なかった事になんか出来る訳がない、だって立夏は心も傷付いたんだから。あの時俺がする事は立夏の心を守ってあげる事だった。側にいて抱きしめて何がつらくて悲しいか、何があったかではなくて立夏の気持ちを聞いてあげるべきだったと今は思ってる。」
堪えていた涙が溢れて流れた。
目の前に大好きな「ハルさん」がいる。
少し気弱で真面目で責任感は強くて、私を真っ直ぐに見て寄り添ってくれる、最後にはいう事を聞いてくれるそんな優しいハルさんがいる。
泣き出した姿を見てオロオロして、ティシュの箱を取ってくれた。
涙を拭いて鼻を噛むと、立ち上がったハルさんが目の前にいる。
「あんまり、無理しないで…立夏、嫌じゃなければ……その、抱きしめても…いいです、か?」
「うん。」
コクリと頷くと寝ているままで優しくふわりと抱き締められた。
「立夏がいる…夢じゃないよね?」
「うん、ハルさんだ。いるよ?これからもずっと、ハルさんが私に寄り添って考えてくれていたら、私はずっとハルさんのサポートをする。それが妻で夫婦だから。だからね?」
ハルさんの背中に手を回す。
「私がいるから…無理に、強くならなくていいよ?ハルさんが変わるの嫌だもん。私が好きなハルさんは気弱でまぁまぁで、少し亭主関白で、でも最後には言うこと聞いて…折れちゃう人。絶対、誰にも渡したくない…ハルさんだよ?」
泣きながらハルさんと抱き締め合った。
カーテンで仕切られた隣のベッドに人がいるなんて知らないまま、最終的に恥ずかしい思いを二人でした。
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