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プロローグ
「いらっしゃいませ。お隣失礼します。りり子です。初めましてよろしくお願いします。」
席に座ったら、可愛らしく挨拶をして名刺を渡す。
少し斜めに浅く腰掛けて、足を長めに見せながら小首を傾げて目は真っ直ぐに相手を見るのがコツ。
ヘルプのみのバイトで入ったお店だけど、時給はいいしヘルプについた先輩からの評判が良いとまたヘルプに呼んでもらえる。
夕飯を奢ってくれるお客様もいるし、チップをくれるお客様もいる。
腰掛けだからバイトなのだけど、そこは言わないのが処世術。
先輩方のお客様を取る気もないし、バイトなのは本業でやって行ける程、自分には覚悟もなければそこまで売れる自信もないからと答える。
「花である先輩の傍の草にでもなれれば十分です。」
笑顔で答えて一か月で人気のヘルプになった。
お酒は飲めないからトークで頑張って先輩のフォローをする。
先輩の人気ナンバーワンは若い子で確か20歳、嘘かもしれないけど私より若い事だけは確かで、私は26歳、この商売30までいけるって入店の時に言われたけど、店では24歳だから多分、彼女も嘘だと思う。
馬鹿にされても舐められても全然平気。
だってもっと馬鹿にされて舐められて生きていたんだもの。
何も知らずに心の中で人を馬鹿にして笑ってる、一番タチが悪くない?
それに比べたら目の前で堂々と言いたい事を言って来るこの業界の売れっ子は、素直で可愛らしいと思えた。
だからお世辞も言うし、気に入られる努力もするし、短い期間だと思えばお金のためと割り切れば何でも出来る。
女のプライドなんて相手がいて成り立つ物で、ここに好きな人も大事な人もいないからプライドも要らない。
今の私は…ただ待っているだけだから。
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