ただ会いたいと思った

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お茶を飲み、寝かせると緋色は帰りましょうね、と鞄を持つ。 嫌だと言う源基を帰るの!と引っ張り連れて行く。 「立夏!明日も来るからね?」 「しーごーと!」 「勇気に頼むよ、年末だし明日一日だけだし、大丈夫!」 「大丈夫じゃないでしょ?事務所開いた時、どれだけ借金あった?助けたのは誰?」 「………緋色です。」 「じゃあ分かるわよね?勇気はまだ若くて信用も足りない、修行の身。あなたの名前で看板を出してるのよ!最後までしっかり稼いで、じゃないと孫におもちゃも買ってあげられないわよ?」 渋々、手を振り帰る源基を見ながら立夏も手だけを振った。 シン、とした静けさが戻ると、座って、と言われて宗春はベッド横に近付き椅子に座った。 「手紙…ちゃんと読んだよ。」 「あっ!あ、うん、良かった、ありがとう。」 久し振りに会う立夏が目の前にいるという事実が夢の様で、宗春はドキドキしてどうしていいか分からず挙動不審になっていた。 それを見て立夏は哀しくなる。 「ハルさんは……変わりたいって…言ってたよね?」 「あ、うん。俺の弱いとこ?今回、羽瀬さんにお世話になって同性だから色々話せて、男だから歳上だから既婚者だからって、相手が承知の上でお互い同意でそうなったら立場は同じで責任は双方にある。今回の様に目が覚めたら脱がされていた、なんて状況では責任なんて半分以下ですってはっきり言われて話しを聞いてやっと騙されていたのかって認める事が出来た。俺の弱さが中途半端な気持ちが立夏を失わせるなら強くなりたい。変わりたい。」 強い目で話すハルさんを久しぶりに見た気がする、と立夏は呟いて、でもな、と続けた。 「私も弱かった。反省する事、いっぱいあった。」 「ないよ?立夏にはない!」 「ううん、手首も切った。これは逃げようとした証拠。認知を、認めて欲しいと言われて…ハルさんを引き摺ってでも、相談に……一緒に行くのが正解だった。 ハルさんは仕事が忙しいからって、きっと頭の中、パニックなんだろうなって…全部を一人で、引き受けた。それも間違いだった。一度だけ会う、それを認めた事も、間違いだった。認知の代わりに二度と会えない、それ位の覚悟じゃないと…認知しちゃいけなかった。そうじゃないと結局は離婚しか道がなくなる。したくないなら、二度と会いに行かないでと言うべきだった。中途半端な優しさは…私も同じだったよ。」 家を出て色々考えた、息を辛そうに吐いて話し、立夏は少し笑った。
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