幸せは足元から崩れる

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「義務みたいなのってしてても意味ないよね?愛情ないよね?こういうの…きつい。普通に戻せないかな?」 言いたい事は分かる。 だけどちゃんとお義母さんに言ってくれないハルさんが悪いんじゃないのと頭で思う。 「ここまでしなきゃ…子供出来ないじゃない!!」 思わず叫ぶと、ハルさんのため息が聞こえた。 「……逆に言えば、この三か月、ここまでしても子供は出来なかった。無理をしても出来ない。それなら自然に任せよう?」 ショックで言葉が出なかった。 ハルさんは頭がいいから喧嘩の時は正論をぶつけて、相手に反撃の言葉を言わせない。 頭の悪い私にはぐうの音も出ない。 泣き出した私を寝室に置いて、風呂に入って来ると言い残して部屋を出て行った。 お風呂から戻ると何もなかった様にハルさんはベッドに入り込んで眠った。 私はベッドの横に床の上に座り込んだまま、まだ泣いてるのに。 信頼関係が少し崩れた気がしたのを覚えている。 それからは自分から誘う事はなくなった。 笑顔で朝食を作り、ハルさんを送り出したら笑顔は消える。 時々、ハルさんが自然な流れとかいうやつで誘って来る。 (自分がしたい時だけ来るのが自然なのかな?私は寝たいのに?) と思いながらも拒否はしない。 だけど明らかに普通にしない?と言われた日から、私の気持ちは変わって来ていた。 言葉は理解出来た、自然に出来るならそれが一番いい、だったらそれを言って欲しかった。ハルさんのしつこいお義母さんに。 そしてその後の何もなかった様に私が見えない様にベッドに入るハルさんが今も頭から離れない。 気不味いのは分かるけど、(わたし)が泣いているのにどうして知らない振りで眠れるの? あの時、お風呂から戻って来たハルさんが、私と同じ目線で抱き締めてくれていたら、何も言わなくてももう寝ようでも、それだけでもきっと違ったと思う。 そんな事も知らない義母はやはり時々家に来る。 色んな理由を付けて、お土産を持って…鰻とかニンニクとか…テーブルの上に出された瞬間、思わず吹き出しそうになって堪えた。 だって笑える。 もう努力する気もない、気持ちも少し離れた気がするのにそこにこれか、と笑っちゃ駄目だと堪えた。 夜のメニューにハルさんには出した。 私は食べてない。 「お義母さんがわざわざハルさんにって!母の愛ねぇ。沢山食べてね。」 笑顔で言って知らない振りをした。
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