幸せは足元から崩れる

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家にいるとお義母さんが来るからパートに出る事にした。 夕方4時までレジに入ると、5時からの割り引きセール品を買って帰れる。 買い物には週に何度か行くわけだし、2割引でも有り難いし、家に居なくて良いし、パートは1時からだけど義母には12時からと話してあるので、11時には家を出ますと、流石に10時前に家には来ない。 隣の市だし…交通機関を使うと朝の通勤時間に重なるからそこまでして一時間の話の為に来ようとは思わないみたいだ。 電話回数は増えたが、それも朝早くか、夕方過ぎじゃないと私はいない。 朝早い時は忙しいのでとハルさんに出てもらう。 夕方はハルさんが帰る前に食事の支度が、と手短に切る。 その後かかってきたらハルさんの名前を呼ぶ。 「ハルさーん!お母様からお電話ですよ。お母様もお忙しいんだから早く、元気な声が聞きたいでしょ!」 と双方に聞こえる様に大きな声でハルさんを呼ぶ。 またか、という顔でハルさんは電話を受け取る。 (またか、と思うなら少しは私の気持ちも分かったんじゃないの?) と思いながら受話器を渡した。 洗濯機を回しに行くと、放り込もうとしたハルさんのズボンが重い。 洗濯機の端にゴツンと音がして、やばいと、慌ててズボンのポケットに手を入れた。 「信じられない……電話で呼ばれて急いでたってスマホ入れたままにする?凄い音したけど……壊れてないよね?やば……今月出費痛いよぉ〜。」 壊れてないか、綺麗なタオルで拭きながら確認してもらおうと洗面所のドアを開けようとした瞬間、音が鳴る。 (あ、壊れてない?) 何気なく手の中のスマホに目を落とした。 見なきゃ良かった。 ポップアップ、メールを知らせる画面。 ーーーーー 前橋 香苗 我儘を聞いて下さり、ありがとうございました。 ーーーーー 前橋(まえはし)香苗(かなえ)って誰? 我儘って何? 頭の中が真っ白になった。 その時、前の様にハルさんが好きだったら見たのかもしれない。 この時の私は傷付いて疲れて、ハルさんを心の底から愛しているか信頼しているか、分からなくなっていて気にせずそれをリビングのハルさんに届けた。 「女性の我儘は聞くんだねぇ?どんな我儘だったんだか。私の我儘なんか聞いてくれた事ないのにねぇ?」 笑顔で少しチクリと攻めた。 ポップアップで中は見てないと分かった様で、説明をしていた。 「会社の子、辞めるんだ、もうすぐ。送別会、俺が担当でお店をね、出来たらここでって頼まれたんだよ。」 「へぇ、送別会ねぇ。確か二年目が持ち回りでするとか前に話してたよね。へぇ〜二年目だったんだぁ。」 嫌味をチクリ…そのまま洗濯機を回しに戻った。
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