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妄語
曖昧さの瑕疵より不実を取る
砕かれた煩悩に朝を見ては一人で泣き濡れ
あてどなく果てもなく耳障りで
落ち着かぬ波音に揺られた涙に空を重ね
選び損なった誠実さと
波の随に寄る辺なく酔うた髑髏
あの子が欲しい どの子が欲しい 貴方が欲しい
私が欲しい 伏せた眼が欲しい
指先にすら宿る仏性が欲しい
目覚めが欲しい
一つずつ辿る仕草と揺らぐ炎
甘えたそれは誠実さ
朧な夢に溶け込むように愛を乞うて
花一匁で焙れた子
誰だって救えはしないのに
一心に伸ばし這わすこの手は何を掴み強張るか
両面宿儺 籠の鳥
吾が手から零れて溢れて心から毀れて溺れて
触れた先に嫋やかな指先を見る
曖昧模糊とした輪郭を描き続けるよりも
染めた硝子に陽が滲む
あの子が欲しい どの子が欲しい 何が欲しい
鳴る喉 剥がれた本性 唯一が欲しい
垂れ落ちた汗に宿る性すら惜しい
吾が仏を宿すに能わず、遠き夢か
掛け合わせた舌先と
臓腑を焼く海の冷たさが骨身に凍みる
不埒と抜根
飽きもせず我知らず光明を見るのなら
どれ程の温もりを得れたのだろうか
憐れな程に愛を呼んで
糸を欲しがるように言葉を強請り
上限も下限も無く、焼け付き
通り抜ける影をも救い給える空は幾許か
どの子が欲しい 空が欲しい あの子が欲しい
読経で目眩む その子が欲しい
揺れる炎に視える貴方が欲しい
春を連れる目白のように、ただ一つの証が欲しい
背中合わせの愛情と包んだ優しさで糸を繰る
不可視の華だけが私を包む
貴方が欲しい あの子が欲しい 私が欲しい
この子が欲しい 誠が欲しい
相談しましょ そうしましょ
妄執と罅割れた曼荼羅
吾が仏は我が身に宿りし
我、喉仏より浄土の花をば咲き初めて
今此処にて境地に到れり
唯一宿りて至福を得る
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