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「プロローグ」
「これで最後だな、エル」
「はい、兄様」
「あと1人でやっと戻れる。……頑張ったな?」
「その、1人なんですけど――――……オレが、選んでもいいですか?」
「……構わないが、誰にしたいんだ?」
「――――……西条 璃空」
「――――……」
言った瞬間、眼前に画面が広がって、オレが指定した男が、映像として見えた。
「この男か?」
「はい」
「年は25か。作曲家を夢見るフリーター。母から仕送りをいまだ貰っていながら、足りない分を借金で賄って、この年で借金700万か……。こんな者を選ぶのか?」
「はい。良いですか?」
「他の人間より、大変そうだが……」
「――――……良いんです。最後の1人、この男で」
「分かった。エル、しっかりな。失敗したら――――……分かっているな?」
「はい。分かってます」
「――――……頑張ってこい」
「はい」
兄様は、オレを撫でて微笑むと、ふっと姿を消した。
それから。オレは姿を変えて、下界に降りて。
最悪に汚い部屋の真ん中に。
ふわりと、浮いた。
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