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姫騎士ロミリア
冷や汗が背中を伝うのがわかった。
振り下ろされた剣先が、鼻筋の辺りを通り過ぎて行く。あと少し後ろに下がるのが遅れていたら、間違いなく当たっていただろう。
木剣を携えた美しい少女の長い銀髪がなびく。流麗で洗練された動きは、思わず目を奪われてしまう。
グリムはその思考を振り払い、すぐに正対する相手のがら空きになったわき腹に、自らの木剣を容赦なく振り払った。
勝ちを意識して、力が入る。練習用の防具はつけてるので、力加減など必要なかった。
少女は目を見張っていた。
グリムが躱すとは思っていなかったのかもしれない。
その表情はグリムが見たかったものだった。
異様に乾いた喉を潤すように、唾をのむ。勢いのついた木剣がそのまま少女に直撃する。
そのはずだったが、グリムの木剣は空を斬った。
銀髪の少女は寸でのところで躱した。しかもその躱し方は予想できるものではなく、跳躍して身体をひねりながら宙を舞った。
その姿にグリムは呆然としてしまう。
「えっ⁉」
グリムがマヌケな顔を浮かべて、少女を見ていると、少女はグリムの背後に綺麗に着地した。
我に返ったところで、もう遅かった。
振り返った先には銀髪の少女が、木剣をグリムの鼻先に突きつけていた。彼女の鋭い瞳は一瞬の隙も与えてくれそうになかった。
グリムは諦めて、握っていた木剣を落とすように手から離した。
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