第一回「愛され、とは」(1)

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第一回「愛され、とは」(1)

はい、静かに。講義を始める。 今回のディスカッション対象は相模恭介(さがみきょうすけ)という男子大学生である。そこ、私語は慎む。男が男を観察してなにが楽しいのかって?ああ、君は今日が初めての受講なのか。一応講座紹介にも書いてあるのだが読んでいないのか?仕方ない、一度しか言わないのでよく聞くように。 初受講の生徒のために、まずは軽く自己紹介をしておこう。私の名前は蘭一真(あららぎかずま)。この愛されゼミの担当教授だ。 作者がBL書きなので想像もつくと思うが、この愛されゼミでは息をするようにBがLする世界観で進行する……メタ発言は不適切だったな、すまない話を戻そう。 この愛されゼミはボーイミーツボーイ活動を支援している。毎回テーマに沿った映像資料やプリントを元に受講生同士でディスカッションをしたり実習を行う。勿論私が責任を持って監修するので不安に思うことはない。 このゼミを受講後、愛され主人公としてBL界で活躍できる人材を育てるのが目的だ。初めてのことに戸惑いもあるかもしれないが、しっかり聞けば理想のボーイミーツボーイ、愛され展開が君達を待っている筈だ。ぜひ真剣に取り組んでもらいたい。 話を進める。 手元の薄い本を開きたまえ。今回の資料はこの薄い本、801と呼ばれる極秘資料だ。ハッピャクイチではない、これは「ヤオイ」と読む。戦時中、敵に知られないように軍が隠語を作成したという話は知っているだろう。801も一般世界における隠語だと思ってくれればいい。 冒頭述べた相模恭介という青年は、この801本の中で展開されるBL世界の主人公である。いや、この言い方には語弊があるかもしれない。彼はこのBL世界で愛され主人公になるべく試行錯誤をしているところなのだ。今日はその様子を観察しながら、テーマに沿って君達にディスカッションをしてもらいたい。 静かに。静かに。 勿論初めから成果など求めてはいないから心配しないでいい。さて今から10分間のトイレ休憩ののち、各々の机を移動してグループごとに分かれてもらう。水分補給やスマホのチェックなども今のうちにしておくように。 休憩。
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