彼が書類を溜める理由

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突然で予想できなかった行動が悔しくて、私は潘さんの頬を両手で挟むと自分の唇をもう一度潘さんの唇に触れさせた。それに応えるように唇を強く押しつけられる。 「潘さん……」 「何?」 唇がわずかに離れると私は低い声で囁いた。 「備品購入の申請書も出してくれないとお寿司奢らせますよ。回ってないやつを」 「え……」 「代休申請書は書き直しです。期日までに出し直さないとその代休で私の買い物に付き合わせますよ。潘さんは私の財布です」 「ちょ……」 「いっそ全部出さなくていいです。もう潘さんに集ることにしますから」 この人を探し回って書類を回収するのはやめる。 私に会いたいのなら潘さんから来ればいい。 「悩むなぁ。書類を出しに行くと上条さんに会えるし仕事も終わるけど、出さないならデートできるんだよね」 「デートじゃないです!」 「出さない方が長い時間一緒に居られるかな」 潘さんが真剣な顔をするから私もムキになる。 「だめです! ちゃんと出してください!」 「じゃあ全部期日までに出したらご褒美がほしいな」 「え?」 「上条さんの食べたいものを奢らせてください。上条さんの欲しいものを買わせてください。上条さんと丸一日過ごせる時間をください」 「っ……」 そんなことを言われたのは初めてで、恥ずかしさで言葉を失う。潘さんが熱を込めた目で見つめるから頷くのが精いっぱいだ。潘さんは照れる私を見て微笑む。 「潘さん……お願いですから、意地悪ないたずらは、どうか私だけにしてくださいね」 「僕が意地悪するのは上条さん限定だよ」 そう言う彼はもう一度私の唇に優しいキスをした。 END
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