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「うんとこしょ、どっこいしょ」
「うんとこしょ、どっこいしょ」
「うんとこしょ、どっこいしょ」
遠くでバァンというカブが爆発四散する音が聞こえた。
流石に力が過多だったようだ。わけのわからんもの132体分の力だしな。途中にめちゃめちゃ力の強そうなやつもいたし、どんなに育ったオバケカブでも1体じゃ太刀打ちできないだろう。
遠くでカブパーティだという歓声が聞こえた。よかったな。
持ち上げていたパンダを下ろすとよろけてコケた。カブの呪いは全て解けたようだ。パンダは尻を叩きながらゆっくりと立ち上がり、俺を見上げた。
「あの、よくわかんないけどもう大丈夫なんですよね?」
「多分な、カブは抜けてみんなで食べるんじゃないかな」
「へぇ。僕も食べてもいいのかな」
「いいんじゃないか? お前の力も入ってるんだろうから行ってこいよ。食えば力がつくらしいぞ」
「おじ、お兄さんはいかないの?」
「俺はとっとと帰る。相場では、異界の飯を食ったらもうこの世界から出られなくなるからな」
パンダはふぅん? と言ってロボットと手をつないでウグイスの鳴き声の聞こえる方向に走っていった。
「バイバイ、お兄さん」
「急げ。急がないと「めでたしめでたし」がやってきて食べそびれるぞ」
そう叫ぶと、パンダとロボットはきゃぁと叫んでスピードを上げる。……本当に搭載してたんだな、ロケットエンジン。
そう思ううちに終焉を控えた世界は段々と暗くなり、パンダが向かった一角だけが遠くにポゥと明るく取り残されてた。そのうち世界は閉じて新しい物語が始まるのだろう。次の物語ではねずみの後に大量のわけのわからないものが続くのだろうか。大長編だな。
さて。俺も逃げ出せるうちに帰ろう。
懐に仕舞っていたお守り袋を開けて中から小さな鈴を取り出して鳴らす。そうすると、カブのいたのと反対側の暗闇の奥から、チリンという清凉な音が呼応した。
この鈴はわけのわからないことばかり起こる俺にエセ陰陽師の友人が持たせてくれた式神なのだ。俺がかけというままにかかせたから、あいつはこれが式神になっているとは知らないだろうがな。
この音を頼りに歩いていけば、そのうちこの闇から現世に戻れるだろう。
了
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