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「試してみますか? 無駄ですよ?」
「こんな往来で全力疾走しなくても目が届かないうちに逃げりゃいいだけだろ」
「僕はずっとおじ、お兄さんを追いかけてますから。学校では自販機のそばでぬいぐるみのフリをして、家に帰ったら玄関の前で嫌がらせもののフリをして」
「ストーカーかよ。じゃあお前も誰かに見張られてんのか?」
パンダは意味深に頷き、今曲がってきた壁の向こうを覗くよう指? 腕? で示す。そっと覗いて心臓が凍るかと思った。少し離れた街灯よろしくスポットライトに照らされていたのは、パンダと同じくらいの大きさのブリキのロボットだ。それが斜めにかしげて佇んでいた。
ボロボロに赤錆びている分パンダよりよっぽど怖い。妙に四角いフォルムで動かすとギギギという音がしそうだ。これに毎晩追いかけれるならお祓いが必要な気がするな。でも。
「あれはそんなに足が速いのか? 逃げられないほど?」
「お、兄さんはまったくわかっていませんね。あれはロケットブースターで空を飛ぶんです。敵うわけないじゃないですか」
「うーん?」
「つまりお、兄さんはお兄さんを捕まえてくれる生贄を探さないといけません」
「それはつまり俺に俺の代わりに食われる候補を探せってことだろ? 俺を捕まえるような奇特な奴なんているかっていう前に、流石にそれは気がとがめるわ」
「何故です? 弱肉強食でしょう?」
どう見てもかわいらしく首をかしげるパンダのぬいぐるみに弱肉強食いわれてもな。そもそもカブは食いもんじゃないのか。うーん。
「今カブはどういう状態なんだ?」
「地面ですくすくと育っています」
「その間に叩き割っちゃだめなのか?」
「それが恐ろしく硬いのです。どんな武器を持ってしても不可能でした、と思います」
どこかオドロオドロしそうに喋るパンダはちっとも怖くはない。
「カブは近づいたら襲ってくるのか?」
「いえ、きちんと育つまでは普通の根菜と同じように地面に埋まって寝ています」
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