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不確定な情報が多いなぁ。それに根菜というものは地面に植わっているのではなく寝てるのか? よくわからん。
再び角からそっと覗くと、ブリキと目があった。やっぱりなんか怖ぇ。
パンダの話しぶりを考察すると、ブリキの後ろにブリキを追いかけているやつがいるってことなのだろう。けれども終点というのはどのくらい先のことなのだろう。
この謎の連鎖の先に何が待ち受けているのか。そもそもこのパンダの言っていること自体が伝言ゲームだろうから、元々のメッセージは全く違うものじゃぁないのかな。例えば。
いつもの癖で額に人差し指をあて、この話の構造を頭の中で組み立てる。
俺の仕事は民俗学だ。民俗学というものは特定地域の様々な伝承文化、信仰風俗、監修や思考を統合し、体系立てて読み解く仕事だ。このようなわけのわからない事象においても、一つの物語として成立するのであればその独自の世界が構築されて然るべきである。
自分が捕まったら、自分を捕まえるやつを探しに行く。『次の相手を捕まえる』じゃなく『次の自分を捕まえる相手を探す』必要がある。そこに横たわる奇妙なレトリック。通常、代わりの犠牲者を用意するのであれば自分が捕まえられる必要はない。単純に犠牲者を捕まえて差し出せばいいということだろう?
なんのために捕まえられるのか。不合理で不必要に思える必要性こそが根底の世界ルールに繋がっている。これは次の対象の自発的なリアクションが必要な呪いなのだ。自主的に捕まえるのでなければ、引っこ抜くことなどはできはしない。やはりこれはカブの話だな。
「カブを見に行く」
「えええぇぇぇぇえええぇぇぇえええええ」
「うるせぇ。行くと言ったら行く」
「カブに近づくとすぐ食べられちゃうじゃないですか!」
「よくわからんが、お前の話だと生贄は一本線に繋がってるんだろ? 紐みたいに。それでお前の話を前提とするとカブが律儀に起点から順番に話しかけていく。それならその起点と終点が近くに存在していたとしても、到達までの時間はかわらんだろ」
……このパンダはどうみても理解してなさそうだが別にいいや。
俺はロボットのところに歩いていく。パンダはあわあわと俺の後ろをついてくる。ロボットはまさか向かってくるとは思っていなかったのか、一歩ギシリと後ろに下がる。
「お前が引っ張られたら、捕まえたやつを引っ張れよ」
そう伝えると、ロボットはギギギと音をさせながらアワアワと頷いた。
だからそのロボットの横を通り過ぎて更にその背後を眺めると、でかい生首が浮いていた。うちの街は一体いつから異界になったんだ。
……まぁ昔からか。
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