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俺は昔からわけのわからない事件に巻き込まれるいわゆる『巻き込まれ体質』という奴だ。だからいつもお守りを携帯している。腐れ縁の凄腕ぽんこつ陰陽師にもらったやつだから、案外効果はある。
それはともかく今回の話もそうだった。
実にわけのわからない顛末だ。
始まりは寒い冬の夜。
数日前から俺の後ろをとぼとぼとついてくる者がいた。といっても危険だとか怖い存在ではない、と思う、多分。殺気のようなものは欠片もなく、寧ろ悪戯をしているような空気感を感じた。
だが最初に見つけたときはかなり驚いた。なぜなら妙な気配を感じて振り返ると、スポットライトのような街灯の照らすまんまるな光の中心に、それがぼんやりと立っていたからだ。
最初はうおっと思ったものの、例えばこれが日本人形とかビスクドールだと反応は違ったかもしれない。走って逃げた気もする。
けれどもそれはパンダのぬいぐるみだった。少し汚れた、というか二足歩行の足の裏はおそらく結構汚れている気はするが、ともあれ体長30センチほどのパンダのぬいぐるみだ。何だこれ、意味がわからないぞと思いつつ、飛びかかられたりはしないよな、飛びかかられたら上着が汚れそうだ、というやはり何だかよくわからない心配をしながら、結局は近寄りはせずに家に帰った。
唯でさえわけのわからないものに巻き込まれるんだ。わざわざ近寄るわけがない。
けれどもその現象は一回こっきりではなく連日続いた。
毎晩同じ時間になると、俺の後ろを1メートル半ほど離れてそのパンダがついて来る。気になるような、どうでもいいような、うっとおしいような気分に陥るものの、なんだか煮え切らずだ。
俺はだから、既にこの怪現象には巻き込まれ終わっていると認識した。終わらせないと終わらない。この関係、つまり意味ありげにパンダが夜な夜なついてくるのを続けるのもなんだかもうイライラするわけで、その日はいつもの帰り道の角を曲がったところで待ち伏せして、パンダが角を曲がるところを捕まえた。
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