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冥界には古くから「悪魔の頬杖」ということわざがある。
これは、有り得ない、非現実的な、存在しない、といった意味であるが問題はその由来である。
元来、悪魔は全ての行動において即断即決、迷いや躊躇という概念はない。
例え身内であろうが無感情に魂を抜く事ができる。ただ目の前の作業を冷静かつ迅速にこなす。やるかやらないか、それが悪魔、それでこそ悪魔なのである。
そういう特性が、いつしか、悪魔は頬杖をついて悩む事はない、すなわち、あり得ないという意味のことわざが出来たというわけだ。
ところがである。その悪魔が頬杖をついて思い詰めているのを誰かが見たという。
これは前代未聞だと冥界中が騒然となり、そしてとうとう駆り出された一匹の下級妖怪が、おずおずと悪魔の元へ歩み寄り尋ねた。「どうかされましたか」彼は死を覚悟した。
悪魔は冷徹に言った。
「排泄に理由がいるのか?」
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