DAY16:結び橋

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意外にもあっさりと聞き入れたサラエアに、へっと呆気に取られたような顔をする悪霊達四人に対し、 「くるくるん、赤い糸。運命結ぶ赤い糸……さよならバイバイ、ちょっきんこ!」 サラエアははさみで切るように右手人差し指で、自分の左手に持った赤い糸を挟みながら唱えた。 すると、ランタンと湊、紬と依子を結ぶ赤い糸がプッツンと音を立てて切れ 「……っ!?」 「わっ!?」 「ひゃふ!?」 「……ふふっ」 四人の足元から夕焼けと同じオレンジ色の光が放たれたかと思うと、思わず閉じてしまった目を開けた時、紬はもう黒い靄に覆われていなかった。 「も、戻れたのであります!じ、自分の体なのであります!」 「や、やったあ!ぼ、僕も元の体で……って、えっ?そ、それじゃ、今まで僕達と一緒に居た紬先輩は……?」 「……やっぱり入れ替わってやがったのか。そうだろ、華神 依子?」 珍妙な顔をして首を傾げる湊に答えるように、ランタンは黒い靄の方へ般若の仮面越しに鋭い視線を向ける。 ふふっと黒い靄姿の依子は愉しげな笑みを漏らしながら、ふわふわ浮かんでいた。 「気付いていたのね……さすがは……ジャック。勘がいいのね……」 「……明らかに様子が変だったからな。本性を出すまで泳がせておこうと思ったんだよ。あんた……何を考えているんだ?」 「ふふっ……後で教えて……あげる。ほら、ジャック……サラエアが……待ってるわ」 黒い靄姿の依子に教えられ、ランタンと紬を含めた五人がサラエアの方を見ると、ねえと彼は待ちかねたように話しかけてくる。 「ジャック・オ・ランタン………早く、僕の"漆黒の魂"を回収してよ。そうしたら……天国に行けるんでしょ?」 「……っ!それは……」 「どうしたの?ジャックのお願い、ちゃんと聞いたよ。今度はジャックが、僕のお願いを聞く番でしょ?」 真摯な表情でサラエアに催促されて押し黙って俯くランタンに 「ジャック……そこまであなたも……腐っては無いみたいね……。誰だって……無邪気な子供に真剣に頼まれたら……嘘は付けないもの」 華神 依子は愉快そうな笑みを口元に浮かべて言った。 うるさいと彼女に言い返すランタンの顔はとても辛そうに見える。 「どういうこと?ミストのお姉ちゃん……ジャックのカブのランタンは、悪霊の"漆黒の魂"をあの世へ送るものじゃ無いの?」 「そうね……。間違ってはいないけど……ジャックじゃ、あなたを……救えない……」 「ちょっと、華神 依子!そう言うあーただって、天国とは縁の無い悪霊でしょーが!自分のことは棚に上げて、ジャックだけを責めるのはやめてよねっ!」 「そ、そうですよ、華神 依子さん!そ、そう言うあなたは、サラエアの願いを叶えられるって言うんですか!?」 ランタンを庇うように、反対に黒い靄姿の依子を責めるグレイミーと湊に、やめてほしいのでありますと紬が両手を広げて前に彼女の前に飛び出した。 「つ、紬っち!?」 「サ、サラエアを天国に連れて行ける人はここには誰も居ないのであります……。だ、だから、誰のせいとか誰が悪いとかそうやって責めるのは、もうやめて欲しいのであります!」 「ふふっ、ありがとう……紬ちゃん。ねえ、ジャック……カブのランタンの秘密……サラエアに……ここに居るみんなに……教えてあげたら?ちゃんと説明しないと……サラエアも……納得してくれないわ」 嘘吐いたのと傷付いているような切なげな顔でサラエアに見つめられ、依子にも促され、ランタンは仕方無いとばかりに重たい口を開く。 「……あんたは知ってるんだな、華神 依子。得体の知れないあんたには知られたく無いと思っていたけど、それならもう……他の奴に隠す理由は無えか」 「ふむ、ジャック……某も聞いていて良いのであるか?都合が悪くなるのであれば、某は席を外すが……」 気を遣ってそう言うコフィンに、知られても命に関わることじゃ無いからなとランタンは自嘲的な笑みを浮かべた。 「それにあんたなら、その気になれば俺は倒せる気がするよ」 「ふっ……それが冗談に聞こえぬから、其方は恐ろしい男なのだよ」 「……っていうか、今倒しちゃってもいいよっ、ジャック?」 屈託の無い表情でランタンを煽るグレイミーに、勘弁して欲しいのであるとコフィンは両掌を上に向けて首を横に振る。 「え、えっと……は、話がズレてますよ、皆さん?ラ、ランタン先輩のカブのランタンの秘密を聞くんですよね?」 「ああ……わかってるよ、湊。今更誤魔化しも逃げもしないさ。俺のこのカブのランタンは……邪神ロキから借りてるものなんだよ。俺はあいつとある契約をして、俺の頼みを聞いてもらう代わりに、カブのランタンの中に回収した"漆黒の魂"をハロウィンの夜にあいつに渡している。カブのランタンの中に回収された"漆黒の魂"は神々の裁きを受けて……ほんのひと握りの魂だけが輪廻転生の輪に戻れるんだ」 「そ、それ以外の魂はどうなるのでありますか、ランタン……」 「……消滅する」 短いけれどハッキリとした口調で言ったランタンに、そんな……とサラエアは悲しげに目を伏せた。
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