第1話  【秋のピクニック】

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 第1話  【秋のピクニック】

 せかへい 外伝1  著者:pirafu doria  作画:pirafu doria  第1話  【秋のピクニック】  サージュ村にある小さな丘。そこに一人の少年が向かう。 「おう、待たせたな!」  彼の名はサージュ村の村長の息子パト・エイダーだ。  茶髪で頭にはゴーグルをつけている。 「遅いぞ〜、パト」  そう言ってパトに腹を優しく殴る。攻撃的な感じではなく、スキンシップのような感覚だ。 「いや、俺遅刻するかもって言っただろ」 「そうだったか?」  パトの言葉に聞き覚えがない。彼はエス。村の門番だ。 「なぁ、ルンバは覚えてるか?」 「ん、覚えてるぞ。確か昨日の16時くらいにそんな話をしてた」 「そんな細かく!?」  ルンバはエスと同じく村の門番だ。今日は休日が重なったということで集まろうということになった。  パト達三人は年齢も近いこともあり、村では小さな頃からよく集まって遊んでいた。悪戯もしたこともあったが、それぞれが仕事をするようになり集まる機会も減っていった。 「じゃあ、行くか」  パトがそう言うと、三人は出発した。  村を出て少し先に紅葉樹の森がある。秋にはそこは燃え盛るように赤く染まる。  三人はそこへ向かうことになった。 「ここに来るもの何年ぶりか……」  エスは紅葉の景色を見ながら、懐かしむ。 「8年じゃないか? パトとはなかなか休みが合わないしな」  ルンバはそう言うと、歩きを指さした。 「あの木を覚えてるか?」 「ん、あ、あれは」  そこには小さな傷の付いた木があった。  8年前、三人が同じように紅葉を見に行った時のことである。  三人は談笑しながら歩いていると、目の前に一匹のモンスターが現れた。  それはウサギのような見た目だが、頭にはツノがあり、尻尾がギザギザしているモンスター。  決して強いモンスターではない。  しかし、パト達三人はアマルの授業を抜け出して、ひっそりと遊びに来ていたのだ。  外にはモンスターがいる。村からはさほど離れた場所ではない。こんな場所で現れるのは稀だ。 「ど、どうする!」  エスはビビりながら何か対策がないか考える。  そんな中、パトは二人を守るように前に出た。 「エス、ルンバ、お前達は逃げろ」  授業を抜け出して気楽に来ただけだ。武器などは何ももっていない。  うさぎのモンスターは一匹だが、武器なしの子供では倒すことはできない。  エスとルンバは恐怖から動くことができなくなってしまう。  ここはなんとかするしかない。  パトは一人モンスターに立ち向かう体制になる。  続く
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