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バースデー・イブ
最近、ボクは機嫌が悪い。
なぜなら、パパとママとお祖父ちゃんが、ボクよりも妹の方を大事にしてるからだ。
ボクは、大人達の話をよーく聞いてるんだからね。
そりゃ、生まれたての赤ちゃんって可愛いよね。
それはボクだってわかるけど、それにしたって、みんなボクのことないがしろにし過ぎなんじゃないかな。
それとも、ボクが気付いてないとでも思ってるのかな。
だとしたら、ボク、すごく悲しいな……
明日はボクの誕生日なのに。
この調子じゃ、もしかしたら今年はお祝いのケーキもプレゼントもないかもしれない。
そう思ったらボクはとってもお腹がグルグルしてきて、なんだか気持ち悪くなってきた。
もしかして、これが、前にパパが言ってたストレスっていうのかな?
そう思った時、ふわりと玄関のドアが急に開いたんだ。
まるで誰かがお外でボクを呼んでるみたいに。
誰も触ってないのに不思議だけど、グルグルが大きくなって泣きそうになったボクは、みんなに黙って家を飛び出したんだ。
走って行ったのは、近くの公園。
みんなもうお家に帰ったのかな。誰もいないや。
ボクは一人っきりでブランコに乗った。
お腹のグルグルはまだ消えてないけど、さっきよりはちょっとだけ小さくなってる気もした。
キィ、キィ、ブランコの音が大きく聞こえてくると、公園に立ってる背の高い電気の棒の先っぽの明かりが、まあるくぼやけていった。
電気だけじゃなくて、公園の外にある信号の赤や黄色も、まあるくなってて、キャンディみたいだ。
でもキャンディみたいに美味しくなくて、ぎゅって目を瞑ったら、なんだかしょっぱい味がした。
とつぜん
「何泣いてるの?」
正面から声をかけられた。
目を開くと、中学生っぽい、このあたりでは見たことないお姉ちゃんが、寝間着っぽい格好で立ってた。
ボクは大急ぎで目をこすった。
「お姉ちゃん、だあれ?」
ボクはとつぜんあらわれたお姉ちゃんにキキカンを持ったから、まずお姉ちゃんのことを知りたいと思った。
「私の事はいいの」
お姉ちゃんはえらそうに言った。
それから
「で、アンタは一人で何してたの?」
もう一回訊いてきた。
ボクはゆらゆらしてたブランコを足でシャッと止めて答えた。
「……家出」
「え?何?」
「だから、い・え・で!家出してきたの!」
唇をウーって尖らせて言ったら、お姉ちゃんは「家出ねえ…」って、あきれた顔になった。
「ほ、本当だもん!だってみんなボクの誕生日を忘れてるっぽいから、そうしたらボクのお腹がグルグルしてきて、それで気持ち悪くなって……だから家出したんだもん」
「お腹がグルグル?」
「うん。グルグル」
「それは大変」
「ボク、病気かなぁ?」
「今はまだ大丈夫そうだけど、ひどくなってきたらもっと大変なことになるよ」
「ええっ?!どうしよう、どうしたらよくなるの?」
「お父さんやお母さんは気付いてないの?」
「うん。だってパパもママもボクより妹のほうが大事みたいなんだもん…」
「どういうこと?」
お姉ちゃんは首を傾げた。
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