バースデー・イブ

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「ただいまぁ」 ボクはこっそりと玄関から家に入った。 家出してたことがばれたら大変だ。 そしたらリビングから 「おい、今玄関で音がしなかったか?」 パパの声が聞こえてきた。 「音?…もしかしたら翼かしら」 ママはちょっと心配そうだ。 「そんなわけないだろ」 「でも気になるから、ちょっと見てくるわ」 パパに返事しながらママが玄関に来るのがわかったから、ボクは大急ぎで二階に上がった。 まっすぐ部屋に入ってベッドにもぐりこんだ。 パパとママと同じベッドだ。 ちょっとしてからママが部屋に入ってきたよ。 でもボクはじっと寝たフリをしてたから、ママはボクが家出してたなんて気づかなかった。 ママが一階に戻ってから、そっとベッドを抜け出して窓の下を見た。 お姉ちゃんはもう帰ったのかなって、気になったから。 そしたら、ちょうどお姉ちゃんが帰っていくところだった。 お姉ちゃんはボクを見つけて、すごく笑顔でボクに手を振って帰っていったんだ。 お姉ちゃんは明日もまた来てくれるって言ってたけど、本当に大丈夫なのかな? もしパパやママがボクの誕生日を忘れてたら、お姉ちゃんはどうするんだろう? 子供のボクには難しすぎてよくわからないことばっかり。 でもお姉ちゃんは、明日が終わるまでは待ってって言ってた。 赤ちゃんがいると色々いつも通りにできないとも言ってたっけ。 うん、それはちょっとわかるよ。 だって、夜遅くなっても、赤ちゃんの声は聞こえてたから。 パパもママもお祖父ちゃんも妹も、たぶん、みーんな悪くないんだ。 そんな風に思ってたら、いつの間にか、お腹のグルグルが小さく小さくなっていた。
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