バースデー

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「お姉ちゃん、お祖母ちゃんのお友達だなんて言ってなかったのに」 ボクはママには聞こえないように小声で言った。 そしたらお姉ちゃんは「ごめんごめん」って、手をあわせてあやまってきた。 「どうして言ってくれなかったの?」 「翼君が本当にお祖母ちゃんのお孫さんかわからなかったからよ」 「じゃあそれを確かめるために昨日ボクを家まで送ってくれたの?」 「まあね。でも言った通りでしょ?ママ、翼君の誕生日を忘れてなんかなかったじゃない」 「うん!」 「え?何か言ったかしら?」 ママが玄関ドアを開けながら振り向いた。 「なんにも言ってないよ!」 「いえ、大丈夫です」 ボク達はパッと顔を前向けてママに返事した。 ママは「そう?」って首をかしげてから 「パパ、パパ、お客様がいらしたの」 家の中に叫んだ。 すぐに奥からパパが出てきたよ。 「お客様だって?」 「そうなの。お義母さんと親しかったそうで…ええと、お名前は…」 「三笠(みかさ)です」 「三笠さんね。お義母さんから翼の誕生日を聞いてたんですって。それでお祝いに来てくださったの。さ、どうぞあがって?」 「お邪魔します」 「それはわざわざすみません。母がお世話になりました」 「いえ、私もお祖母ちゃんとのおしゃべりは楽しかったです」 お姉ちゃんはパパにお澄まし顔で言ったよ。 でもそれを聞いたパパは照れ臭そうに鼻をかいたりしてた。 リビングに行くと、テーブルの上にはジュースとかサンドイッチとかチキンとか、ご馳走がいっぱい並んでて、ボクはびっくりした。 だって、朝から唐揚げの匂いが全然しなかったから、今日はもうパーティーはなしなんだと思ってたんだ。 「よかったね。翼君」 「うん!」 お姉ちゃんがボクの耳にコショコショって言った。 それから部屋を見回して 「あの、翼君の妹さんは…」 パパとママ両方に訊くように呟いたんだ。 ママはテーブルの前で何かしながらボク達に背中を向けたまま答えたよ。 「二階で寝てるの。昨夜夜泣きで眠れなかったみたいね」 「そろそろ起こしてこようか」 「そうしてくれる?もうすぐお義父さんも来られるだろうし」 「了解」 パパがタンタンタンって階段を上る音、ボク、結構好きなんだ。 ママの音はトントン、時々ダンダン、妹は…トストスかな? そんな事思ってたら、お姉ちゃんがまた訊いたよ。 「翼君の好きな唐揚げは、ないんですね」 そしたらママの手がぴたりと止まった。 「そうなの。翼はお祖母ちゃんの唐揚げが大好きだったんだけどね。でもほら、その代わり、ケーキはいつもより豪華なのを予約したのよ?じゃーん!」 テーブルの上には、チョコレートケーキが登場したんだ。 「わぁ!二段だ」 「すごいですね」 「でしょ?今取りに行ってきたの」 そうか、ママはそれでお出かけしてたんだ。 ボクはママにありがとうって言おうとしたけど、ちょうどピンポーンってチャイムが鳴った。
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