バースデー

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「お祖父ちゃんかな?」 「きっとお義父さんね。ごめんなさい三笠さん、このロウソクをケーキに飾っておいてくれる?」 「7本全部ですか?」 「ええ。お願いね」 ママはお姉ちゃんにロウソクを渡して玄関に行った。 「翼君、本当によかったね。もうお腹グルグルしないでしょ?」 お姉ちゃんがロウソクを飾りながら言った。 「あ、ホントだ!」 お腹のこと、すっかり忘れてたよ。 エヘヘって笑ったら、お姉ちゃんもにっこりした。 しばらくして、お祖父ちゃんが入ってきた。 「お義父さん、こちらが、今お話した三笠さんです」 「おお、あなたが…。うちのが世話になりましたね。今日もわざわざありがとう」 お祖父ちゃんはお姉ちゃんにお辞儀して、それからテーブルの上に大きな写真立てを置いた。 お祖母ちゃんの写真だよ。 「あいつはおしゃべりだから、うるさかったでしょう?」 「そんなことないですよ」 お祖父ちゃんはお姉ちゃんの返事が嬉しかったみたい。 目の下にシワがクシャってできたよ。 「いい写真…」 「お祖母ちゃんの写真?」 「うん、素敵な笑顔」 「よく撮れてるでしょう?何年か前の写真ですけど、あいつが気に入って、自分の遺影に使ってくれって言うものですから…」 お姉ちゃんはちょっと困ったような顔をしたけど、上からパパが戻ってきたから、みんなはパパが抱っこしてる赤ちゃんの方を見たんだ。 お姉ちゃんもそっちを見ながら、またボクにコソッと訊いてきたよ。 「翼君の妹?」 「うん。パパの後ろから階段おりてきたのがボクの妹だよ」 「え?あの女の人が…?」 お姉ちゃんは困り顔を驚き顔に変身させた。 「あんな大人の人が妹さん?翼君、7歳だよね?だってロウソクは…」 「違うよ。ロウソクは長いのが3本短いのが4本あるでしょ?」 「それじゃ…」 「祖母のお友達ですって?」 妹がお姉ちゃんに話しかけてきたから、ボクはお口を閉じたよ。 「え、あ、はい…」 「じゃあ亡くなった兄の事も?」 「え…と」 「生きてたら今日で34歳になるんだけどね」 妹は棚にあるボクの写真をお祖母ちゃんの横に並べた。 「34歳…?」 お姉ちゃんがボクを見たから、ボクはエヘヘってした。 「そっか……」 お姉ちゃんはそっとボクの頭を撫でてくれた。 「よし、みんな揃ったからロウソクに火をつけようか」 パパの声でパーティーの始まりだ。 ロウソクがきらきらしてウキウキしてくるけど、途中から、ボクにはそれがまたキャンディみたいに見えだしたんだ。 お姉ちゃんがくれた風船も一緒にまあるく揺れてて、お部屋じゅう綺麗だった。 「やっぱり泣き虫だ」 お姉ちゃんが部屋の隅にいるボクに笑って言った。 「これは嬉し涙だもん!」 「そうね、よかったね」 「うん。本当に、よかった……あれ?」 ホッとしたボクは、何だかすっごく眠たくなってきて、ぺたんと座り込んだ。 「疲れちゃったんだよ。もう安心して眠っていいよ。誰も翼君のこと忘れたりなんかしないから」 そうかな うん、ボク、ちょっとだけお昼寝するね…… 目を瞑ると、お姉ちゃんの声も遠くになっていった。 お姉ちゃんは、誰かとコソコソ話をしてて………
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