21人が本棚に入れています
本棚に追加
「お祖父ちゃんかな?」
「きっとお義父さんね。ごめんなさい三笠さん、このロウソクをケーキに飾っておいてくれる?」
「7本全部ですか?」
「ええ。お願いね」
ママはお姉ちゃんにロウソクを渡して玄関に行った。
「翼君、本当によかったね。もうお腹グルグルしないでしょ?」
お姉ちゃんがロウソクを飾りながら言った。
「あ、ホントだ!」
お腹のこと、すっかり忘れてたよ。
エヘヘって笑ったら、お姉ちゃんもにっこりした。
しばらくして、お祖父ちゃんが入ってきた。
「お義父さん、こちらが、今お話した三笠さんです」
「おお、あなたが…。うちのが世話になりましたね。今日もわざわざありがとう」
お祖父ちゃんはお姉ちゃんにお辞儀して、それからテーブルの上に大きな写真立てを置いた。
お祖母ちゃんの写真だよ。
「あいつはおしゃべりだから、うるさかったでしょう?」
「そんなことないですよ」
お祖父ちゃんはお姉ちゃんの返事が嬉しかったみたい。
目の下にシワがクシャってできたよ。
「いい写真…」
「お祖母ちゃんの写真?」
「うん、素敵な笑顔」
「よく撮れてるでしょう?何年か前の写真ですけど、あいつが気に入って、自分の遺影に使ってくれって言うものですから…」
お姉ちゃんはちょっと困ったような顔をしたけど、上からパパが戻ってきたから、みんなはパパが抱っこしてる赤ちゃんの方を見たんだ。
お姉ちゃんもそっちを見ながら、またボクにコソッと訊いてきたよ。
「翼君の妹?」
「うん。パパの後ろから階段おりてきたのがボクの妹だよ」
「え?あの女の人が…?」
お姉ちゃんは困り顔を驚き顔に変身させた。
「あんな大人の人が妹さん?翼君、7歳だよね?だってロウソクは…」
「違うよ。ロウソクは長いのが3本短いのが4本あるでしょ?」
「それじゃ…」
「祖母のお友達ですって?」
妹がお姉ちゃんに話しかけてきたから、ボクはお口を閉じたよ。
「え、あ、はい…」
「じゃあ亡くなった兄の事も?」
「え…と」
「生きてたら今日で34歳になるんだけどね」
妹は棚にあるボクの写真をお祖母ちゃんの横に並べた。
「34歳…?」
お姉ちゃんがボクを見たから、ボクはエヘヘってした。
「そっか……」
お姉ちゃんはそっとボクの頭を撫でてくれた。
「よし、みんな揃ったからロウソクに火をつけようか」
パパの声でパーティーの始まりだ。
ロウソクがきらきらしてウキウキしてくるけど、途中から、ボクにはそれがまたキャンディみたいに見えだしたんだ。
お姉ちゃんがくれた風船も一緒にまあるく揺れてて、お部屋じゅう綺麗だった。
「やっぱり泣き虫だ」
お姉ちゃんが部屋の隅にいるボクに笑って言った。
「これは嬉し涙だもん!」
「そうね、よかったね」
「うん。本当に、よかった……あれ?」
ホッとしたボクは、何だかすっごく眠たくなってきて、ぺたんと座り込んだ。
「疲れちゃったんだよ。もう安心して眠っていいよ。誰も翼君のこと忘れたりなんかしないから」
そうかな
うん、ボク、ちょっとだけお昼寝するね……
目を瞑ると、お姉ちゃんの声も遠くになっていった。
お姉ちゃんは、誰かとコソコソ話をしてて………
最初のコメントを投稿しよう!