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茶色の髪が眩しい彼女はシアといった。両親が宿屋を経営しているそうだ。
手を引かれるがままに赤い屋根が印象的な宿屋まで誘導される。あれよあれよという間に部屋が決まってしまった。シアの熱弁のおかげで、通常よりも安い値段で泊まれるようになった。
「うおぉー! ベッドだ!」
板張りの部屋には白いベッドと小さなテーブル、壁には窓が付いていた。荷物を置いて久方ぶりのベッドに触れる。柔らかく清潔だ。しかも個室。こんな贅沢が許されてもいいのだろうか。
今すぐベッドに潜り込んで眠りたいところではあるが、まずは荷物を整理しなければならない。とりあえず外套の洗濯をしてしまおう。そう立ち上がった瞬間、ノックの音が響いた。
「エンケさん、今いい?」
「いいよ」
シアが水瓶を持ってきてくれる。旅人の道具が物珍しいようだ。水を飲んでみるとやはり美味しい。濁りのひとつもない、清澄な水。僕は喉を鳴らしてコップの水を飲み干してしまう。
「それにしても、僕はあまり村の人たちに歓迎されてないみたいだね」
「気を悪くしないでね。ちょっと前まで色々あったから」
「色々?」
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