29人が本棚に入れています
本棚に追加
僕の立ち居振る舞いから、鱗目当てにやってきた不埒な輩ではないと判断したらしい。幾分表情を緩めて彼は言った。
「だろ? 水がいいから魚も美味い。こんな川を汚そうなんてとんでもないよな」
「川?」
何も知らない顔で僕は首をかしげる。
「……最近までな、川を滅茶苦茶にする奴らがいたんだよ」
「ああ、魚を乱獲していたんですね」
「まあ、そんなとこだな。今はよそ者に対してみんな敏感になってるんだ。あんまり気にしないでくれよ」
笑顔を向ける。やはり虹色の鱗の話題はタブーになっているようだ。何とか情報を引き出したかったが、そこはシアに頼るしかないか。
「この村で何かおすすめのものはありますか?」
「うーん……滝かね。ちょっと行くのはしんどいかもしれないけど、綺麗な滝があるんだ。まぁ旅人さんなら平気だろう」
「へえ、いいですね。行ってみます」
僕は丁寧に頭を下げ、さっそくそこを目指すことに決めた。
最初のコメントを投稿しよう!