亡国のハルジオン

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「当時の俺たちは戦争を知らなすぎた」 「知らなくて当たり前だ」  アイザックはモルスの山々が聳え立つ方角を指差した。  沈黙して空を見上げた二人は持ち場に戻ろうとしたときだった。ゴオーと音を立ててサイレンが鳴り響いた。この音は国の定めた領空に何者かが無断で侵入したことを知らせるものだ。リアムのトランシーバーが応答を要求した。 「こちらリングトン。どうしたなにがあったモリア伍長?」 「中尉こちらモリア伍長、報告します。東側の連邦のエンブレムが記された見たことのない戦闘機がわが国の領空に侵入。超スピードで低空飛行していたためレーダーに映らず発見が遅れました。どうぞ」 「了解した。敵機に信号をおくれ、反応がなかったら宣戦布告とみなし撃墜しろ。」 「御意」  リアムとアイザックは走り出した。飛行場からすでに新型の戦闘機が三機飛び出していた。 「なにが平和だ、貴重な休み時間を奪いやがって」 「そんなこといってる場合じゃない一大事だ」  風が吹き始めて、同時に体に響くような重低音が聞こえた気がした。 「新型の音じゃない」  やまない音に焦りつつ空を仰ぐ。 「リアムあれはいったい?」  アイザックがそれに指をさした。   それは、見たことのないフォルムの戦闘機だった。くさび形のインテークのある平らな側面空気取り入れ口、双尾翼、薄い台形の低アスペクト比翼が装備されていてエンジン二基が胴体付近についている。
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