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「また下手な絵を描いているのかリアム」
不服にもそう話しかけられた青年、リアム・リングトンは顔を上げ中指を立てる。
男が何を描いているのだとスケッチブックを見ようものなら腰にぶら下がっているリボルバーで脳天をぶち抜きたい気分だった。男は苦笑いを浮かべた。
「おいおい、同期の桜に殺気を飛ばすなよ」
「アイザック俺が自分の絵をコケにされるのがいやなのは知っているだろう」
「まあおちつけよこの本読んで頭を冷やせ」
リアムは手に取ると作者を確認した「べガルダ海の奇跡、著者アイザック・ロビンソン」そして放り投げる。
「お前が書いた小説など読んでたまるか」
アイザックは本を拾い上げると軽く肩をくすめてみせた。
「失礼なやつだなこの人気作家アイザック先生に向かって、というかお前勤務中じゃないのか」
「そうだよ。休憩中」
「世界が平和になったら軍人は気楽なもんだよな中尉殿」
アイザックがおどけて言った。
「仮初めの平和をまにうけるなバカ者、それにいまの俺の任務は書類整理や軍事費の調整をする事務仕事だぞ、ちっとも気楽じゃない毎日が戦争だよ」
「毎日が戦争か……でも血で血を洗う戦争はもう終わったんだ、アンゴラ帝国と同盟締結を結んでから五年たつ。連邦国に奪われた俺たちの領土もいずれは全て返還される日がくるさ。すこし歩かないか」
立ち上がり尻についた土を払う。
リアムは一度背伸びをするとアイザックの背中を追った。
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