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雨のち晴れ
止まない雨などないと知る。曇りになって、その雲から雨が降って、その雨が雪に変わり、そして最後には陽が差す。季節のように移り変わる。
「優雨くん?」
「僕が間違ってました」
頭を下げる。謝罪と感謝の意味を込めて。
「これからはちゃんと自分のためにも、生きます」
「……気付いたんだね。いや、気付かされたんだね」
多くの言葉を交わさなくても分かってくれる。それは僕とあいつが、そしてあいつとヒナタさんが繋がっているからだ。
僕とヒナタさんを繋ぎとめてくれたあいつは雨みたいだ。
「じゃあ帰ろうか」
「もうですか?」
ヒナタさんが立ち上がり、窓の方に目をやった。
「そろそろ約束の時間みたいだから」
約束が何か気になったが、降り出しそうな雨に時間だということを悟った。
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