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金曜日の仕事帰りは、心も体も軽い。
しかも明日は年下の彼氏、吉田君とデートだ。そして、私の誕生日でもある。もう今にも空を飛んでしまいそうなほどに夢心地だった。
彼氏がまだ高校生なので、いつもは背伸びして大人っぽく振る舞っている。
でも、明日はちょっと甘えてみようかな。
そんなことを考えながら、いつもは通らない道へと足を踏み込んだ。理由は特にない。直帰するのは、なんとなくもったいないような気がした。
(ん……?)
ふと、見覚えのある姿を目にした。吉田君だ。
彼が、この時間帯にこの辺りを歩いているのは珍しい。私と同じく、明日を前に浮足立っているのかもしれない。
ちょっと驚かせようと、そっと近づこうとした時だった。
「おっまたせー!」
知らない女の子が、ふわふわとした髪をなびかせながら吉田君へと駆け寄っていく。程よくフリルが施されたキャミソールワンピースが似合う愛らしい少女だ。多分、彼と同じ年くらいだろう。
その少女が、吉田君の腕に絡みついた。
「ちょ、お前」
「いいじゃん。減るもんじゃないでしょ?」
「…………」
「あれあれ、顔赤いよ?」
「う、うるせーな」
「じゃあ、早速いこっか」
「おう……」
吉田君が、知らない少女と腕を組んだまま遠ざかっていく。
………………
…………
……え?
何、あれ? 身内?
いや、でも身内同士であんな密着する……?
頭の中でああだこうだと、様々な憶測や言葉がぐちゃぐちゃに飛び交う。
いや、憶測も何もない。
あれは、誰がどう見たって浮気だ。
(……バカみたい)
信じられないと胸が締め付けられるのと同時に、やっぱりと落胆の息が漏れた。彼への怒りの前に、数分前まで浮かれていた自分に腹立った。
男にとって、女なんて結局は飾りでしかないのだ。前の彼氏だってそうだった。
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