勇者に転生したらまずは何をしようか…。

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勇者に転生したらまずは何をしようか…。

すると神様はパチンと指を鳴らし、テーブルと書類を出した。 「よくぞ言ってくれた!!では早速、契約といくかの。」 俺はすぐに椅子に座り、神様の話を聞いた。 「ゴホン!ではいくつか質問に答えてもらってから、この契約書に君の血で名前をかいてもらうからの。」 俺は元気よく返事をした。 「はい!神様!」 (おぉー!!これがゲームやアニメで出てくる契約書か!何て書いてあるか読めないからさっぱり分からんけども…。) 俺の心はウキウキしっぱなしだった。 恐らくこの契約書にサインをしたら、俺は長年の憧れだった勇者になれる! それに魔法も使える世界って言っていたし、勇者になってモンスターを倒せば、彼女だってすぐに出来る筈だ! 「ゴホン!では最初の質問じゃ、君は人以外の種族に抵抗はあるかの?」 (あるわけないじゃんか。だって…エルフのお姉さんもいいし、あ、獣人の女の子ってのも捨てがたいし、普通の人間の女の子だって、絶対可愛いに決まってる!!) 俺はニヤけながら返事をした。 「はい!抵抗などこれっぽっちもありません!!」 神様は頷くと、次の質問をした。 「ゴホン!えぇ、君は仲間を大事にできるかの?」 (仲間かぁ〜勇者らしい質問だな、答えはもちろん…) 「はい!もちろんであります!」 神様は俺が敬礼をしている姿を見て頷いた。 「ゴホン!次で最後じゃ、例えどんな困難があろうとも乗り越えて進む覚悟があるかの?」 (さらに勇者っぽい質問来たーー!!!!) 俺は椅子から立ち上がり、胸に拳を当てた。 「もちろんですっ!!!」 神様は俺の気合いとやる気に満足しているようだ。 「よろしい、では異世界に行くにあたって何か欲しい物や力などはあるかの?」 俺は椅子に座り、考えた。 (やっぱ、勇者なら聖剣か?いや、魔法も使いたいし。あ、てか向こうの文字とか読めなきゃ勇者としてダサくない?) 俺があれこれ考えてると、神様が言った。 「まぁそんなに考えすぎるでない。出来る限りの範囲で叶えてやるからの、思いついた事をワシに言ってみるんじゃ。」 神様はニコニコ笑顔でそう言ってくれた。 (あぁ、なんて御心の広い神様なのだろう…) 俺は、祈りのポーズをして、今考えている事を正直に話した。 「えっと、まず剣が欲しいのです!」 「うむ、剣か…良かろう、魔…」 (やった!次は…) 神様は何か言いかけていたようだったが、俺は間髪入れずに続けてしまった。 「あと!魔法も使える様になりたいのです!」 そう言うと、神様は少し考えてから言った。 「うむ、魔法は向こうで覚えるしかないのでな…よし!それなら沢山の魔法が使えるように魔力を恵もう。」 (魔力!GET!ならこれもいけるはず…。) 俺は、最後の願いを申した。 「それで!やっぱ文字は読めた方がいいと思うんですけど…さすがにこれは無理ですかね…。」 俺はさすがに要求しすぎたかなと思い、気まずい気持ちになった。 だが…。 「うむ、人間の言葉は同じだから勇者は問題ないじゃろう…しかし魔族となると……。よし分かったわい!サービスで向こうの全種族の言葉と文字が解るようにしておいてやろう!」 神様は、まるで値切り交渉に負けたような言い方で要求を飲んでくれた。 「ありがとうございます神様!感謝します!!」 (まさか願い事全部叶うとは…。あぁ神よ、先程はクソじじいなどと考えてしまって本当に申し訳ないです。どうかお許しを…) 俺は思わず祈りを捧げてしまった。 (魔族って言葉は気になるけど…まぁいいか!) 俺の祈りのポーズを見た神様は、自慢げで嬉しそうに笑った。 「ゴホン!ではこの契約書に君の名前を、君の血で書いてくれいじゃろうか?」 神様はテーブルの上の何て書いてあるか読めない契約書にサインを求めた。 「はい!すぐに!!」 俺は右手の人差し指を歯で噛んで血を出し、フルネームを契約書に書いた。 「では、これで契約成立じゃな、本当に引き受けてくれてありがとうの。これはワシからの贈り物じゃ受け取ってくれい。」 神様はそう言うと、パチンと指を鳴らした。 すると、俺の体から見る見るうちに若返り、17歳くらいの姿になった。 「おぉー!!何だか力が湧いて来た!!」 俺は学生の頃のエネルギーが身体中に溢れて来た。 神様がさらに指をならすと、俺の真上から光が差し、体が宙に浮き始めた。 「君の体は向こうの世界ではなかなか歳を取らないからの!思う存分、人生を楽しんで来るがよいぞ!」 俺は空中から手を振って、大きな声でお礼を言った。 「神様!!本当にありがとうございます!!クソじじいとか思って本当にすいませんでしたー!!!………」 そして俺は光りに飲み込まれ、異世界へと転生したのだった…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー その後。 神様は、俺が異世界に旅立ったのを見届けて、椅子に座り紅茶を出して飲んでいた。 「あぁ、美味いの…。そう言えばあやつ勇者がどうのこうの言っておったが、魔王に転生するってちゃんと分かっておるのかの……まぁいいかの、ワシをクソじじいとか言っておったし…説明しようとして遮ったのはあやつじゃし…。」 かくして俺は無事に魔王へと転生したのだった…。
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