ちょっと待て…誰か嘘だと言ってくれ…。

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ちょっと待て…誰か嘘だと言ってくれ…。

転生完了後……。 俺は今、何故か分からないが、王の間の王座に座り大歓声を浴びている…。 《うぉーーー!!!!!》 この広い室内に見えるのは、様々な種族が種族ごとに列を作って並び、先頭にそれぞれの種族のボスみたいなのが立っていて、まるで軍隊のようだ…。 そして玉座から下を見ると、4人が片膝を着き頭を下げている…。 (どう言う事だ…。俺が王様なのか??) 俺は、頭をフル回転させて考えた。 (確か、転生が成功したと思ったらこの椅子に座っていて…。目を開けたらこいつらが急に歓声をあげて…。いや待てよ、この世界では勇者=王様なのか?そうだ、きっとそうだよ!前に座ってる4人は人間みたいだし!まぁ、その後ろの軍隊みたいなのは人間とは言えないけど…。) 俺が、黙ったまま考えていると、片膝をついていた1人が立ち上がり、王座の階段を上ってきた。 (わー銀髪ロングのイケメンだー) 俺は棒読みでそんな事を考えながら男を見た。 すると、男は俺の足元で片膝を着いた。 (これは、あれか!?お待ちしておりました勇者様。ってやつか!?この世界を救って下さい。ってやつだよな!?あーどうしよ!返事の仕方なんて考えてないよ〜) 俺は、生前のゲームやアニメを思い出しながら、妄想をしていた。 しかし、そんな妄想を一瞬で叩き割る言葉が出てきた…。 「お待ちしておりました魔王様。」 「は?」 俺は思わず、素の声が出てしまった…。 「あの、どうかなされましたか魔王様?」 銀髪ロングイケメンは顔を上げ、不思議そうな顔で俺を見ている。 (いや、ちょっと待って…魔王?俺が??) 俺は、銀髪ロングイケメンに聞いてみた…。 「あの〜何か勘違いをしてませんか?俺は魔王なんかじゃないと思うのですが…。」 (俺は勇者としてこの世界に転生したんだ!んな馬鹿な事あるかっての!これだからイケメンは…) すると、銀髪ロングイケメンは焦りながら言った…。 「いえ、恐れながら間違うはずもございません。その漆黒の黒髪に暗の如し黒い瞳、そしてその強大な魔力、さらに背中に背負われているのは間違いなく生前の魔王様がお持ちになっていた『魔剣オプス=クリタス』貴方様以外の相応しき魔王様など、この世界にはおりません。」 そう言って、銀髪ロングイケメンはまた顔を伏せた…。 俺は、咄嗟に抗議をした。 「いやいやちょっと待て!?黒髪に?黒い瞳は日本人の誇りだし?魔力は神様から貰っただけだし?は?何?魔剣??いやいやこれは聖剣エクスカリバーって名前にするって決めてたし……」 俺が必死で話していると、銀髪ロングイケメンが両手を広げ、口を挟んできた。 「おぉ!さすが魔王様!我々魔族にとっての黒とは言わば誇り!強大な魔力も選ばれた者にしか与えられないものであり魔王様が文字通り選ばれた存在!それに、背中のものは確かに魔剣とは呼ばれていますがそれは我々にとっては聖剣も同じ!と、なんと素晴らしいお方なのかっ…」 そう言って、銀髪ロングイケメンは感動しながらこちらを見ている。 俺は正直ドン引きしている…。 (は?え?なに?じゃあ俺は魔王に?えっ…なんで?) 「なら、勇者ってのは…。」 俺は動揺しすぎてつい言葉に出てしまった。 すると、銀髪ロングイケメンは突然体を震わせ、怒りを乗せた声で言った。 「勇者…あの忌々しい人間どもめ…。前魔王様を殺し、世界中に伝え、鼻を伸ばして調子に乗っていた虫ケラ共…。」 (え?なになになになに?こいつ怖えぇよ!) 銀髪ロングイケメンは悔しそうに続けて言った。 「前魔王亡き後、私が奴らを探し出し葬ってもう100年…次こそは必ず、必ず魔王様を守り切ってみせますから!どうかまた!お側に!!」 (おいおいちょっとまて…) 俺は、ここに来る前の事を、ゆっくりと思い出してみた。 ……………。 (あ…。) 俺は、神様が何か言おうとしていた事や、魔族と言う言葉、そして契約書の時の質問を思い出して、怒りと悔しさが込み上げてきた…。 「…あんの。」 俺は玉座から勢いよく立ち上がり、天に向かって叫んだ。 「あんのクソじじいぃぃいい!!!!!!」 俺の身体中から魔力が噴き出し、さっまで騒いでいた魔物達が次々と吹き飛ばされ失神して行く…。 俺は気持ちが収まらず、全力で叫んだ。 「ああぁぁ!!チクショおぉぉぉおお!!!!」 俺が雄叫びをあげていると、目の前で耐えていた銀髪ロングイケメンが立ち上がり吹き飛ばされまいと耐えながら大きな声で言った。 「ど、どうか!どうか落ち着いて下さい魔王様!!このままでは皆が!皆が死んでしまいます!!」 俺は、ハッとして我に返った…。 それと同時に、噴き出していた魔力も収まった。 「あ、ありがとうございます魔王様、どうか、どうかそのまま怒りをお収め下さい。」 銀髪ロングイケメンは腰を低くし警戒しながら両手を前に突き出していた。 俺は慌てて謝った。 「あ、す、すみません!!」 周りを見ると、銀髪ロングイケメンと片膝を着いていた残りの3人を除く者は皆地面に倒れていた…。 (ヤベェ…俺、やっちまったかも……。) 俺は、とりあえず玉座に腰を下ろした。
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