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魔王直属幹部…
すると、銀髪ロングイケメンがまた膝を着き、俺に礼を言った。
「あぁ魔王様、怒りを収めていただき誠にありがとうございます。お陰様で皆何事もなく済みました。」
俺が辺りを見ると、倒れていたもの達が、少しずつ気を取り戻し、震えながら立ち上がっていた。
(いや、大ダメージだと思うけどねっ!!)
「はぁ〜〜。」
俺は大きなため息をついた…。
(これじゃ、本当に魔王じゃないか…。と言うか、魔王なのか。)
俺はもう、これ以上被害を出して迷惑がかからないように、自分が魔王に転生した事を素直に認める事にした。
(仕方ないよな〜なっちまったんだし、もう元にはもどれないし…)
俺はとりあえず、ずっと俺の前で膝ついている銀髪ロングイケメンに話しかける事にした。
「あの、先程は申し訳ありません。その…気まずいので顔を上げてもらってもいいですか?」
すると、銀髪ロングイケメンはすぐに顔を上げて言った。
「そんな!魔王様が謝られるなど!それに私達に敬語などは不要です!どうぞ吐き捨てるくらいのお言葉で話して下さい、いや!むしろ吐き捨てて下さい!!」
そう言い終わると、息切れでもしたのか、ハァハァと息を上げている…。
「あ、はぁ…そこまで言うなら、普通に話せるよう努力は…する…。」
俺はとりあえず、銀髪ロングイケメンの言う事を聞く事にした。
「あぁ…ありがたき幸せ…。」
銀髪ロングイケメンは天に両手を広げてそう言った。
(あれ?こいつさっきより息上がってないか?大丈夫なのかこれ?)
俺は少し警戒しつつ、質問した。
「えぇーと、それで貴方のお名前は?」
俺がそう聞くと、銀髪ロングイケメンは急に真顔で俺を見つめ、少し低い声で言った…。
「魔王様、お前の名は?とお聞き下さい。」
俺は、あまりの変化にビックリしてしまった…。
(えっ?なにこいつ…めっちゃ怖いんですけど!え?何?言われた通りに聞けばいいのか?)
俺はとりあえず、言われた通りに聞き返してみた。
「ゴホン!あーお前の名は?」
すると銀髪ロングイケメンは、自分の体を両手で抱きしめ震えながら変な声を出した…。
(うわっ!え?気持ち悪いんですけどー!!)
俺はドン引きして、玉座の背もたれに身を寄せた…。
すると、それを見た銀髪ロングイケメンはすぐに体勢を戻して答えた。
「あ、すみません…申し遅れました。私は魔王直属幹部の1人、魔人族のアスディーと申します。」
アスディーはそう言って深くお辞儀をした。
(魔王直属幹部?いや待て、どっちが素なんだこいつ…。)
「えっと…。後ろに控えている3人もその魔王直属幹部とかってやつなのか?」
俺は、アスディーを警戒したまま、玉座に座った。
「えぇそうです、すぐにご挨拶させますので!」
そう言ってアスディーは一歩下がり、俺に背中を向けて言った。
「魔王様より許可が出た!3人とも御前へ!!」
《はっ!!》
3人は声を揃えて立ち上がり、横一列のまま俺の数歩先に来て片膝を着いた。
すると、アスディーも同じように並び体勢を合わせてから自己紹介を始めた。
「では魔王様!改めまして紹介致します。私は魔王直属幹部が1人、魔神族アスディー。」
すると、隣も続いて自己紹介をした。
「同じく!魔王直属幹部が1人、竜人族モラル。」
モラルは金色短髪で青い瞳の青年、筋肉もあるしワイルドって称号が似合いそうだ…。
「同じく!魔王直属幹部が1人、悪魔族サラです。」
おぉ、サラ!彼女は、赤くウェーブした長い髪に紫がかった瞳、胸が大きく、色気のあるお姉さんって感じだ…。
「同じくっ!魔王直属幹部が1人、人狼族のカルフィーですっ!!」
カルフィーは恐らく4人の中で1番年下なのかな…。まさに見た目は少年と言ったところだろうか。雪みたいに白い髪に赤い瞳、どうやら1人だけ緊張しているようだ。
自己紹介が終わると、4人は声を揃えて言った。
《我ら一同、ここに忠誠を誓います!!》
俺は目の前の光景に圧倒された。
(おぉ…。アニメで見るのと実際言われるのはこんなにも違うものなのか…。)
俺は、生前に見たアニメの記憶を思い出した。
(えっと、あの作品では確かこう言い返すんだよな…。)
俺は玉座から立ち上がり、左手を横にバッと伸ばし、右の拳をドン!と心臓の辺りに当てていった。
「よし分かった!!みんな俺について来いっ!!!」
《……………。》
「だから……ついて……。」
皆んなは何も言わずキョトンと俺を見ている…。
(あ…れ?俺、もしかして間違えた?)
この固まった空気の中、俺の額からは次第に冷や汗が出てきた…。
(あれ?…どうしよ、めっちゃ恥ずかしいのだけど…)
俺は、無言でアスディーを見て、ウィンクで助けを求めた。
(アスディーさ〜ん、気づいてぇ〜!!)
すると、固まって見ていたアスディーがハッと気づいて立ち上がり、そのままの体制で固まっている俺の横に来て、耳元を手で隠し、小さな声で教えてくれた。
『魔王様、1人1人の右手の甲に口付けをして下さい。それで、忠誠の契約は完了しますので!』
そう言い終わると、アスディーはそそくさと元の位置に戻って体勢を整えた。
皆は相変わらず、キョトンとした顔で俺を見ている…。
俺はその目線に恥ずかしくなり、耳が熱くなってきてしまった…。
(クッソ〜。そう言う事は先に言えよな…てか、何?手の甲に口付けって!普通逆じゃね!?王様がして貰う側じゃね!?あぁ〜今更やるの凄く恥ずかしい…。)
俺はとりあえず一旦目を瞑って手を下ろし、他の者達と目線を合わせず無言のまま、アスディーの元へ足早に歩いて行った。
(あぁ止めてくれー。左側からすごく熱い視線を感じるじゃねーか…)
アスディーの前に立つと、アスディーは頭を下げ、右手の甲を出した。
俺は右手でそれを下から支え、ゆっくりと口付けをした。
(ん?あれ…?こいつも耳が赤いし、しかも震えて…あ、いや、やっぱ考えないでおこう…)
それから残りの3人にも同じ手順でさっさと口付けを済まして、足早に玉座へと戻った。
「はぁ〜。」
(もう、魔王やめたい…。旅に出たい。)
俺は大きなため息をついて、心の中で弱音を吐いた。
それから、アスディー以外の3人は下へ戻り、俺は次の指示をアスディーから聞いた。
「魔王様、次で最後ですので、もう暫く辛抱して下さい。次は、各種族の長が順番に忠誠を誓いに来ますので、先程と同じように口付けをお願いします。」
アスディーはさっきの俺の失態を気遣っているのか知らないが、皆には聞こえないように配慮しながら俺に細かく説明した。
「……分かった。」
(おいおい、俺の唇もつのかこの数…てか、最初から教えて欲しかったよねそれ!)
それから、アスディーに呼ばれた種族が順番に俺の元に来て、挨拶と魔王復活の祝いの言葉を俺に伝え、忠誠を誓って行った。
俺は適当に流しながら、鱗や毛などを気にしながら、ひたすら口付けを行ったのだった…。
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