魔王として、頑張ってみる事にした…。

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魔王として、頑張ってみる事にした…。

それから、アスディーに言われ、適当に魔王の挨拶を済ませて、解散となった。 俺は幹部4人と、城の中を案内してもらい、勇者対策会議とかなんとかで、城のバルコニーにある円卓を囲んで座っている。 (城は森と海に囲まれて建っているのか…。) 俺は、座る前に見た、外の世界を思い出していた。 城は、森の中の高い崖に位置し、崖の下には穏やかな海が広がっていた。イメージしてた魔王城とは似つかず、城もしっかりしていて綺麗だったのだ。 (こんなに澄んだ青空と穏やかな風なんていつぶりだろう…。あぁー外行きたい、旅したい…) 俺がため息をつくと、アスディーが立ち上がり、会議を始めた。 「それではこれより、勇者対策会議を始めさせていただきます。まず最初に、恐らく魔王様の復活は世界中に知れ渡っていると思われます。」 (なんだって?) 俺が話しを止めようとしたら、竜人族のモラルが笑いながら言った。 「まぁあれだけ派手に魔力を出したら、気付かない方がどうかしてるぜ!」 (えっ?魔力?) すると、悪魔族のサラも思い出すように続けて言った。 「あれは最高だったわ〜、私、久しぶりに興奮しちゃったもの。」 (こ、興奮…。) 人狼族の少年カルフィーに至っては、目を輝かせて俺を見つめながら言った… 「はい!あの時の魔王様は、ものすごくかっこよかったです!!」 俺はあのクソじじい発言の事を思い返していた。 (確かにあの時は、怒りと悔しさで魔力が噴き出したが…。世界中にバレる程なのか?) 「あのさ…俺ってそんなに魔力出してた…?」 俺が恐る恐る尋ねると、皆は口を揃えて言った。 《はい、魔王の如く。》 (クソっ…やっぱ魔王なんて嫌いだ!) 俺は、円卓に顔を伏せた。 すると、アスディーが話しを進めた。 「オホン!えぇー、それでですね、いずれこの城にも魔王様を討伐する為に、勇者が来ることは明確です。」 《うん、うん。》 「ですので、こちらから先手を打って、人間どもの国々を焼き尽くし、全員抹殺してはいかがと提案します。」 アスディーは一礼してから席に着いた。 すると、モラルが拳同士をぶつけ合いながら言った。 「そうだぜ魔王様!俺達全員で奴らを1人残らずヤっちまおうぜ!!」 続けてサラもモラルに乗っかった。 「戦争…本来、あんな力も弱い種族をいじめるのは不本意だけれども、私は賛成よ、楽しめそうだし…」 サラは、円卓に片肘を付いて頬を手に乗せている俺にウィンクをして、唇を舐めている…。 (わぁお、エッロ…。) 俺が、サラとの妄想に入ろうかと思ってたとき、カルフィーも続けて声を上げた。 「ぼ、僕だって、たくさんの同族を人間達に殺されてます!だから…まだまだ弱いけど、僕だってやれば出来るって魔王様に証明したいです!」 カルフィーは、両腕でガッツポーズをし、やる気満々な様子だった。 まぁ、確かに、こいつらにも色々事情と言うのがあるのだろう。 憎しみを持つもの、悲しみを抱えているもの、ただの戦闘狂…に変態。ドM気質の奴まで…って、 (あれ?ほとんどまともな奴いないな。) 俺が、あれこれ考えていると、アスディーが立ち上がった。 「魔王様!!では、我々はこれより各種族の兵を集め、下等な人間共へ戦線布告を行うと言う事でよろしいですね!?」 俺にとっては、勇者になれなかった時点で正直どうでもいい事なのだが。 よくよく考えると、勇者になれなくても、この世界を旅したりは出来るかもしれない。 まぁ、外を出歩くには、問題は山積みだが…。 しかし、せっかく転生したのだから、次こそは自由に生きてみたい。 俺にとっては、そのための世界でもある。 今、魔族と人間の間で全面戦争が起これば、この世界は戦火に包まれ、いくつもの都市が焼け野原になるだろう…。 (なら、答えはもちろん。) 俺は、アスディーに笑顔で答えた。 「却下だ。」 「ぐはっ…」 アスディーは胸を押さえながら息を上げている。 (うわ、気持ち悪。) 俺がドン引きしながらアスディーを見ていると、モラルが話した。 「まぁ、魔王様がそう言うんだったら、少し残念だけど俺は従うぜ?だがよ、今後勇者が城に攻めて来た時はどう対処するんだ?」 (勇者か…俺も会って見たいんだよな…) 俺は、少し考えてから答えた。 「そだな、俺も勇者がどんなものなのか興味があるから、攻めて来たときは俺1人で対応する。」 そう言うと、みんなが驚いて固まった。 (ん?なんだ、俺変なこと言った?) すると、アスディーが先に慌てて話した。 「そ、それはいけません魔王様!もしまた魔王さまが勇者にやられでもしたら!!」 サラも立ち上がり言った。 「そうですわ!万が一にも魔王様がやられたら、次こそ私たちも終わりですわよ!!」 そして、まさかのカルフィーにまで怒られた…。 「そうです!僕も反対です!!もう、魔王様には居なくなって欲しくないです!!」 すると、モラルがみんなを鎮めてくれた。 「まぁまてまて!魔王様にも何か考えがあるんだろう。」 モラルの言葉で落ち着いた皆は、黙ったまま席に座った。 「まったく、お前らは…。それで、魔王様。俺から1つ言いたい事があるんだがいいかな?」 俺は、ビックリしながら頷いた。 「確かに、魔王様のその強大な魔力と、魔剣オプス=クリタスがありゃ、負ける事はまず考えられねぇ。」 (まぁ、あのクソじじいから貰ったものだけどね…) 「しかし、持っているのと、使いこなせるってのは全く別の事だよな?その辺のとこ、魔王様はどう思ってるんだ?」 俺は、鋭いところを突かれた…。 (確かに、俺はただ持っているだけであって、剣技も知らないし、まだ魔法も使ってない…。) 「うぅ…。それを言われると…。」 俺が、渋い顔をしていると、アスディーがモラルに怒鳴った。 「貴様!魔王様に対して失礼だぞ!!申し訳ありません魔王様、今こいつを私が……」 俺は、下を向きながら立ち上がり、頭を下げた。 「すまん!!確かに俺は力を持っているだけで、使いこなす事は出来ない!!」 そう言うと、アスディーが怒りを収め俺を見た。 「魔王様……」 俺は続けて、皆んなに頼んだ。 「だから、だから!俺に力の使い方を教えて貰えないだろうか?必ずモノにして見せるから!!」 《…………。》 (あぁ…なんてみっともないんだろう。こいつらもきっと失望しているだろうな…。)
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