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ただ、その考えが理亜の真意ではないことをまだ知らなかった。その事実に気が付かされたのは、彼女がもう一言ナノカに付け加えた後のこと。
「まぁ、その答えって」
ナノカが瞬時に反応する。突然、僕を睨みながらのガールズトークが始まった。何だか居心地が悪い。
「理亜ちゃんは分かってるのよね。情真くんの声に張りがなかったこと」
「ああ……情真の性格からしても、おかしい」
「そうよ。陰鬱で暗いけど、声を出す時は綺麗な張りが出るのよね!」
褒められているのか、貶されているのか。
心が複雑な状況に陥ったところで、ふと理亜の考えに気が付いた。彼女は元から一ミリとも助けるつもりはない。それは知っている。それだけだったら、まだ良いのだ。最悪な状況を用意してやがる。
「その特訓をしてあげた方がいいだろう? 合唱部で発声の練習をしているナノカの方が私より適任だろ? だとすると、ここはあんまり声が響かないし、もっと日の当たる場所でやった方がスカッと良い声も出るんじゃないか?」
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