第1話

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仕事に没頭していて、季節を感じることが少なくなった気がする。 今、看護師になって数年経った。 それは学生時代からの夢なんだけど、いざなってみると目まぐるしい生活の日々だった。 それに伴い、趣味のことをする時間を失ってきた。 みんなもあると思う。 社会人あるあるだと思う。 趣味といえば、たまにいくテニスが好きだ。 家からバスで行けるオートテニス場があって、時間を見つけては行くようにしている。 でも、いつの日か危うく怪我しそうになってしまった。 「あら大変! アイシングしましょう」 声をかけてくれたのは施設の見回りに来ていた、女性のスタッフだった。 彼女は急いで医務室へ連れて行ってくれて、なんと応対が終わるまで待っていてくれた。 「待っていてくれたんですか」 慌てて頭を下げる私に、彼女はさも当然という雰囲気で答えた。 「お客様の心配をするのは、もちろんスタッフですから。 それに、近しい年頃の女性はなかなか居ませんからね」 少し日焼けの跡が残る小さな彼女 -えり子という名前- は、なんだかキュートだった。 私たちは一気に仲良くなった。  ・・・ でも、疲れ切った私にはなかなか彼女に会いに行けなかった。 家でゆっくり過ごす休日の方が体力を回復するんじゃないかなあ。 頬の痛みはまだ赤く残っている。
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