花火大会に誘われて行ったら、美少女が待っていました

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「ねえ、相楽さん」 「なに、西嶋くん」 「あのさ、相楽さんて本当に僕の事……」  好きなの? と訊こうとした瞬間。  夜空に大きな花火があがった。  同時に沸きあがる歓声と、身体に響く大きな音。  夜空を見上げると、いくつもの色とりどりの花火が僕の目に飛び込んで来た。  そういえば、今日は花火大会だったっけ。  多くの人が、この花火を目的に来ているのだろう。  神社の境内からでも見られる花火は、迫力があって素敵だった。 「きれい……」 「うん」  思わず見惚れてしまい、言いかけた言葉を忘れてしまった。  それほどの、見事な花火だった。  それまで祭りを楽しんでいた人々も一様に空を見上げてるようで、一切の音が消えた。  聞こえてくるのは花火の大きな音だけだ。  ずっと花火を眺めていると、相楽さんの手が僕の手に触れてきた。  その感触にドキンと心臓が飛び跳ねる。  相楽さんは何も言わず、ギュッと僕の手を握りしめてきた。  その手は柔らかくて、温かくて、小さくて……。  ブルッと身震いするほど心地よかった。  思わず僕もその手をギュッと握り返す。  瞬間、相楽さんが僕に顔を向けた。  僕も相楽さんに顔を向ける。  真っ赤に顔を染めた相楽さんはとっても可愛くて……。  僕はニコッと笑った。  相楽さんも嬉しそうに笑う。  そうして、二人で笑い合いながら花火を見つめた。  パラパラと咲き誇る夜空の花火。  本格的に間近で見るのは初めてだ。  こうして見ると、本当にきれいだ。  来年もこうして彼女と見られたらいいな。  僕はそう思いながら、つないだ手の指と指を絡め合わせた──。
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