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ここ天野川町の花火大会は決して大きくはない。大きくはないが、一級河川の天野川の河川敷にはたくさんの屋台が並び、近くにある神社の境内でも花火見学でたくさんの人がごった返している。
近隣の市や町からも多くのお客さんが集まるほどの一大イベントだ。
とはいえ、人混みの苦手な僕はその限定お守りだけを買ったらさっさと帰る予定だった。
もちろん、それは相楽さんにも伝えてある。
「ごめんね、西嶋くん」
神社の境内まで続く道を歩きながら、相楽さんが言ってきた。
「な、なにが?」
若干声が裏返りながら尋ねる。
「突然、花火大会に誘っちゃって」
「あ、うん。別に……」
別にってなんだ、別にって。
もっと気の利いたセリフを言えよ。
そうは思うものの、それ以外の言葉が出てこなかった。
僕は慌てて話題をそらすことにした。
「でも知らなかったな。相楽さんがお守り集めが趣味だったなんて」
「そうなの。最近は可愛いのとかキャラクターものとか、いっぱいあるから」
「そうなんだ」
「最近のお守りはね、お守りっていうレベルじゃなくて……なんていうか、オシャレな小物グッズみたいなの。気づいたらもうハマっちゃってて」
「意外だね。相楽さんって、本しか興味のない人だと思ってた」
僕の言葉に相楽さんは
「意外ってなによー」
と言ってむくれる。
その顔がものすごく可愛くて、僕はドキドキしてしまった。
「でもいいの?」
「なにが?」
「いろんな神社のお守りを一緒にして。神様同士がケンカするってよく聞くけど」
「うーん、大丈夫じゃない? 別に神様のご利益(りやく)を得ようと思って買ってるわけじゃないから」
そうなのか?
ぶっちゃけよくわからなかったが、相楽さんがそう言うんだからそうなんだろう。
「そっか。じゃあ僕もその限定お守り、買ってみようかな」
その言葉に相楽さんは「ふふふ」と笑って
「どんなお守りか楽しみだね」
と言った。
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