花火大会に誘われて行ったら、美少女が待っていました

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「西嶋くん、見ててね! 金魚たくさん取るから」  そんな僕にはお構いなしに楽しげな相楽さん。  そしてなぜか自信満々だった。  金魚すくいの名人なのだろうか。  相楽さんはポイをかざしながらタライの中を真剣に覗き込んでいた。  その姿に、目の前の金魚すくいのおっちゃんも目を奪われている。  二人して相楽さんの真剣な表情に見惚れていると、相楽さんは「えい!」とポイを水の中に突っ込んだ。  それはまさに「突っ込んだ」という表現が正しいほど、ぶっ飛んだ動きだった。  バシャッと水しぶきを上げながら突っ込んだポイはあまりの衝撃で一瞬にして破れ、その破れた輪っかの中を金魚が通り過ぎていった。 「………」 「………」  その様子をポカンと見つめる僕といかついおっちゃん。 「あれ? おかしいな。マンガだとここで一気に2、3匹すくえるのに」  いや待て。  どこをどう見たら今ので金魚がすくえるんだ。  単にポイを水の中に突っ込んだだけだろ。  いくらなんでも下手すぎる。 「西嶋くん、やってみてよ」 「あ、うん」  じっと見つめられて緊張する中、僕はなるべく静かにポイを動かした。  正直、最後にやったのは幼い頃だったからやり方なんてあまり覚えていない。  慎重すぎるとかえって破れやすいから、勢いが大事だというのは覚えている。  そして水につけるのはほんの一瞬。つまり金魚が水面近くに差し掛かった時がチャンス。  とりあえずにわか知識で金魚を狙い、水面近くに差し掛かった瞬間を狙って一気にすくいあげてみた。  すると、なんということだろう。  うまい具合に金魚が乗っかって見事1匹ゲットできた。 「わっ、やった!」 「すごい、西嶋くん!」  手を叩いて喜ぶ相楽さんに、目の前のおっちゃんがあからさまに「チッ」と舌打ちをした。ご、ごめんなさい!  けれども取れたのはその1匹だけで、その後何度やっても金魚は取れなかった。  どうやら最初の1匹はビギナーズラックだったらしい。  それでも金魚が取れたことに僕は大満足だった。
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