花火大会に誘われて行ったら、美少女が待っていました

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 じっと僕を見つめるその顔は、いつも隣で本を読んでいる相楽さんとは思えない。  とても綺麗で、素敵だった。 「……わかった」  僕は相楽さんからお守りを受け取ると、袋を開けた。  中には白い小さな紙が一枚入っている。  すでに用意していたのだろう、相楽さんが僕にボールペンを貸してくれた。 「えーと……」  ボールペンを受けとり、神社の柱に紙を押しつけて書く内容を考える。  相手の好きな部分。  好きな部分。  好きな部分……。  同じように相楽さんは僕と反対側の柱に白い紙を押しつけて、紙にさらさらとペンを走らせている。  その姿をじっと見つめていると、ふいに目が合った。  ビクッと反応して顔を隠す相楽さん。  か、かわええ!!  いや、それよりもこっちだ。  視線を戻して紙を見つめる。  うーん、好きな部分……。  ぶっちゃけ、今の相楽さんには好きな部分が多すぎて書き切れない。  いったい何を書けばいいんだ。  結局、僕は『なにもかも全部好き』と書いてお守りの中にしまった。  これ、開けて読まれたらどうしよう……。 「書けたよ」  そう言ってお守りを渡すと相楽さんも「私も」と言ってお守りを僕に渡してきた。 「あ、ありがと」  緊張しながら受け取るものの、中身が気になってしょうがない。  それは相楽さんも同じようで、透けて見えるはずもないのに提灯の光に照らしながら中身を読もうとしていた。 「ねえ、なんて書いたの?」  相楽さんの言葉に僕は「教えない」と一言。 「気になる……」 「開けちゃダメだよ? 絶対だよ?」 「それ、芸人の押すなよ押すなよ的な意味?」 「違うよ!」  慌てて否定する僕に相楽さんはクスクスと笑った。 「わかってるよー」  くそっ、いちいちなんて可愛いんだ。  理性を保つので精一杯だ。  でも、疑問に思う事がある。  本当に相楽さんは僕の事をそんな風に想ってくれてるのか?  なんだか信じられない。  席がとなり同士なだけで、あまり会話もしたことないし。  家も近所じゃないし。  部活も所属している委員会も違う。  思えば共通点はあまりない。
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