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ステラ・マリス行きの星間汽車は、まもなく出発時刻を迎えようとしていた。
夜十一時。あたしはかじかんだ手を吐息であたためながら、空を見上げる。冬の寒空の中、白く輝く星が艶やかに天を彩っている。
「お客さん、そろそろ出ますよ」
おひげの車掌さんが困ったように首を傾げたので、あたしは慌てて汽車のそばに駆け寄る。
「ごめんなさい」
「いえいえ。では切符を拝見」
ひらり、と手のひらを差し出される。あたしはポケットから小さな月長石を取り出した。おひげの車掌さんはにっこり微笑んで、すうと手のひらで月長石を撫でた。その瞬間、ぽうと淡い青色の炎が月長石の中に灯る。
やさしい淡い光。これがステラ・マリス行きの切符だ。
「どうぞ、ご乗車ください」
汽車へと乗り込むと同時に、ポオ――ッと甲高い音と共に、汽車は星の粒を吐き出した。
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