ずーっと、一緒だよ

1/1
前へ
/1ページ
次へ
 どのくらい時間が経ったのだろう?  空は相変わらず暗く、時計すら見えない。  虫や動物の鳴き声、踏む葉や枝の音、自分の吐息がうるさいくらい聞こえるが、それが逆になぜか静寂を感じさせる。  初めは歩いていたはずだが、時間が経つにつれ、徐々に走るようになっていった。  走って走って走って、そして辿り着いたのは、何度も繰り返し来た開けたところだった。 「また……」  膝に手を置きながら息を整える。  何の変哲もないところだが、私はこの場所を忘れられない。  私はその中心の柔らかいところを避け、道とは呼べないような木々の間を通る。  服や髪に枝や葉が引っ掛かるが、構わなかった。  なるべく通ったことのない道を選び、しばらく走る。  逃げるように、走って走って走って。  そしてたどり着いたのは、又してもあの開けたところだった。 「そんな……」  私はついに地面に膝を着く。  先ほどからどんな道を選んでもここに戻ってしまう。  右だろうが、左だろうが、真っ直ぐだろうが、必ずこの開けたところに戻るのだ。  ここに来た時はそんなことはなかった。  ほんの森に入って十数分で着いたところだったのだ。  だが、帰ろうとした時、私はこの森から出られなくなっていた。  初めは気のせいかと思ったが、何回も、十回も、二十回も繰り返すうちにそうでないことに気づく。  走っても走っても走っても、この場所に戻るのだ。  恐怖と疲れと喉の渇きに放心している私の耳に聞き慣れた声が聞こえた。 「ずーっと、一緒だよ。これからも」  私は反射的に立ち上がり駆け出す。  恋人を埋めたところから逃げるために。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加