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御門虫介といえば、ふつうに結構有名な俳優。変な芸名だから印象にも残るし。
その本名は鷹宮和重。
わたしの、正真正銘の父親だ。
世間では、物静かなイメージがあってかっこいいとか、結婚してるってわかってるけど抱かれたい、なんて言われてる。
家の中でもわりとそんな感じだけど、気がつくとママにべったり。娘のわたしのことなんて眼中にないくらいに。
それは、芸名を見ればすぐにわかる。ママの旧姓に虫……熱狂者って意味。つまりママに夢中。
さすがにドン引きするけど、別にわたし自身がパパに愛されてないわけじゃないから、やめてほしいとは思ってない。
それに……ちょっと興味深い。
なんでパパはこんなにママのことがすきなの?
どういうなれそめってやつがあったの?
って前にきいたことがあったけど、ママは恥ずかしいから絶対に教えないって言った。でも、知り合ったのは高校生のときだよとは教えてくれた。
ママは、パパ以上に静かなひとだと思ってた。
だから、こんなに感情豊かに表現するなんて、すごく意外。
今年の春、小学5年生になったからという理由でわたしのひとり部屋がある家に引っ越した。
というか、新築の一軒家を建てた。
住所は変わったけれど、転校はしなくて済む距離。わたしのことを考えて両親はそうしてくれた。
引っ越しの片付けが済んで、新しいクローゼットを開いて遊んでいると、わたしの荷物じゃない小さめの段ボールを見つけた。中に入っていたのは、ディスクが1枚。
それをパソコンに入れて中身を確認したら、流れてきたちょっと画質の悪い映像には、きれいに着飾ったパパやママたちが、そんなことしてた。
演劇部ってやつかな。お芝居してるんだよね、これ。
もしかしたら、パパの宝物なのかもしれない。いや絶対そうだ。
そっか。
ママは、わたしに芝居してたことを知られたくなかったんだ。
別に恥ずかしく感じることはないと思うけど、そういうことなら仕方ないのかも。
見たって気づかれないようにしまって、パパの部屋に段ボールを持っていく。急いで部屋に戻って、わたしはさっき見たものを思い出していた。
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