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"子ども"だって恋はするんだよ
「……あのさ。田嶋から、鷹宮がおれのことすきって聞いたんだけど、それってまじ?」
「えっ……」
最高学年の小学6年に進級した。
慌ただしく始まった新学期から1ヶ月経ち、来月の修学旅行に向けての準備中、タイミングを見計らって柴田佑がそう尋ねてきた。
「どうしたの、いきなり……」
「はぐらかさないで教えろよ。おれのこと、すきなの?」
よく見たら、柴田の耳がすごく赤くなってる。
もしかして、柴田はわたしがすき、なの?
正直、わたしは柴田のことなんてまったく興味ない。ただ、クラスで2番か3番目に女子に人気があったから、話を合わせてわたしもすきって言ってただけ。田嶋っていうのはクラスの中心人物で、空気が読めない他人の嫌がることを好む女子。いいように言ってもお節介なやつ。
もし、このままわたしがすきって答えたら、わたしは柴田と付き合うの?
おとなのまねごとみたいに?
……わたしの、パパとママみたいに?
ずっと、想像していた。憧れだと思っていた。
でも……なんだか違うみたい。
わたしは別に、だれかと恋愛なんてしたかったわけじゃないんだ。
だって、目の前の男子がわたしのことをすきなのかもしれないと思ったら、ただ気持ち悪いとしか感じない。
たとえわたしが、柴田のことをすきだったとしても、きっと結果は同じ。
パパとママみたいな相思相愛ってやつは、わたしにはたぶん無理だ。
「……ごめん。それ、田嶋のほら。なんか勘違いしてて困ってるんだよ」
「えっ、まじか。わりと真剣なトーンで言われたから今回は本気なのかと……今の、忘れて。準備の続きやろうぜ」
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