三人寄れば文殊の知恵

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「折れた!爺ちゃんの竿が、俺帰ったら死ぬほど怒られるじゃないか!」 「五月蠅いな!不可抗力、そう悪いのは魚だこのくそ!!」 「うわわ!にじゅう押さないで、これ以上前に行くと海に落ちる」  真夜中の海で男三人がもつれる様に、折れた竿を握りしめどうにか魚を釣り上げようとしていた。滑稽にも見えるその姿は真剣ではあったが、やはりどうしたら良いのか解らなかった。 「って早く!そのグルグル巻くやつで糸巻いて、俺達で竿持ってるから」 「よっしゃ!んじゃ、一気に巻き上げてお魚とご対面と行こうじゃねぇか」  カイジンの言葉ににじゅうは任せろと言わんばかりの顔で、力いっぱいリールのハンドルと呼ばれる物を一気に力いっぱい巻いた瞬間だった。”パン”と言う音と共に今まで重かった竿は嘘のように軽くなった。 「あー。バレた」 「何がバレたの?エロ本の隠し場所とか?やっぱり定番の机の裏とかは見つかりやすいよね」 「違う!魚に逃げられたんだよ。竿先見て見ろよ、サルカンの先につけた筈の針付きの糸が千切れて無くなってるだろう」
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