三人寄れば文殊の知恵

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 カイジンと眼鏡がそんな会話をしていたが、にじゅうはまるで何かに取りつかれたように呆けていた。落ち着いた頃話を聞くと、何でも釣りの引きや重さを感じその衝撃に呑まれたのだと話した。  そして、他の二人とてただ饒舌で何時ものような会話をしていたのでは無かった。見れば二人とも平静を装うとしたが手はまるで痺れたかのように小刻みに震え興奮している様子であった。 「凄かったな。あの魚何だったんだろう。俺達もうちょっとで釣り上げられたのに」 「わっかんないよ!メッチャデカかったでしょ!ヤバいよ何が掛かったんだろう。スマホ、スマホで調べてもどの魚か解んないよ」 「爺ちゃんに殺される!次どうやって釣竿盗もう」  もはや竿の折れた事よりも、あの魚の重さと引きが三人の中でただならぬ感情を植え付けてしまったのだった。  釣りにハマる人の多くは”ビギナーズラック”とを体感する人は少なくない。そして、釣りをする上で魚の強い引きを体感すれば虜になる者が多いのも事実である。  興奮冷めやらぬ夜。ただ、皆同じ気持ちなのであろう。折れた竿と先程まで戦っていた海の方を見つめ、三人は尽きる事のない興奮を各々口にするのであった。
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