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「リアム、ソファが汚れる……っ」
バスローブを脱がされ背中を撫でられてぞくりとする感覚に身体を震わせながら慶一朗が制止の声を挙げるが、バスローブがあるから大丈夫というリアムの奇妙に切羽詰まった声に男とのセックスは初めてなのに興奮しているのかとの疑問を覚え、リアムの肩に両手を回しながらそっと名を呼ぶと、ヘイゼルの双眸に見た事がない強さと優しさとが入り交じった色が浮かび、あっという間に本能のそれへと取って代わられる。
「……抱きたいか?」
リアムにしてみれば答えは一つの問いかけだったが、慶一朗にとっては心の奥底にある感情へ一つの道筋を与えるもので、ひっそりと問い掛ければ言葉よりも雄弁な双眸に見つめられ、その眼光の強さに負けたように目を閉じる。
男というよりはオスの本能を前面に押し出した貌を見た時、リアムと過去に付き合った女性達もこの貌を見たのだろうかという疑問が芽生え、瞬間的に胸の奥にチリチリした痛みが生まれる。
その痛みを最近経験したと気付きリアムとの付き合いを断った時に感じたことも思い出し、今更どうしようもない過去に存在した彼女達に嫉妬した事に気付いた慶一朗は、ゆっくりと目を開けて意外な近さで見下ろしてくるヘイゼルの双眸を抱きしめようと両手を上げて頬を包むと、軽く驚く愛嬌のある顔に艶然と笑いかける。
「リアム……来い」
その言葉と笑みにリアムが逆らえるはずもなく貪るように慶一朗にキスをするとしっかりとそれを受け止めてリアムの裸の背中を抱き締めるように両手を回し、ソファに背中から倒れこむのだった。
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