peanut butter.

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 リアムを出迎えるためにバスローブ姿でドアを開けた慶一朗は、リビングに招き入れると同時にリアムに背中からしがみつくように腕を回す。  恋人同士のハグやキスはいつもならばリアムからすることが多く、慶一朗からのそれが珍しいと思いつつ腹の前で組まれる手を撫でて手を離せと告げるが、リアムが惚れているきれいな手はその場から動こうとせず、どうしたと苦笑交じりに問いかける。 「……いや、温かいから離れたくないと思っただけだ」 「寒いのならバスローブから着替えればどうだ?」  背後から聞こえてくる嬉しい言葉に顔がにやけそうになるが、その声の下に何か隠し事をしている気がし、慶一朗の両手を力任せに離させたリアムは、驚いていても端正な顔を見下ろしてにやりと笑みを浮かべる。 「ケイ、ジオラマがどこまで出来上がったか見せてくれ」 「いや、まだそれほど進んでないから……」  見ても楽しくないぞ、だからやめておけとあからさまに慶一朗が顔を背けたことから確実に何かを隠している事に気付いたリアムは、掛け声一つを放って慶一朗を抱き上げると、降ろせグリズリーという罵声が頭上から降ってくる。 「誰がクマだ。暴れると階段から落ちるぞ」  お望み通り下すことになるがどちらかといえばそれは落下だぞと笑いながら慶一朗を背負うように肩に担いで軽々と階段を登ったリアムが開きっぱなしのドアに気付いて一歩中に足を踏み入れた瞬間、肩の上の痩躯に緊張が走る。  リアムの眼下に広がっている光景は俄には信じられないものだった。  作業テーブルの上だけではなく足元にも散乱するパーツや木材、それらを納めていたと思しきツールボックスが開いたままなのは特に問題はなかったが、大問題なものが床に散乱していたのだ。
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