peanut butter.

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 どう考えてもゴミ箱に捨てる手間を惜しんで床に捨てたとしか思えないビールの空きボトルやミネラルウォーターのボトルが数本だけではなく、プラスチックの容器-しかも内容物がまだ残った状態-も床に散らばっていて、これは何だと思わず声を低くしたリアムに、肩の上から何だろうなというすっとぼけた声が返ってくる。  さらに信じられないことだが、肩に担いだ慶一朗が子供のように足をばたつかせたため、リアムの腰や背中に膝が当たり、痛いと思わず慶一朗を床に下すとその場から逃げ出そうとした為、逃がすかと一声吠えて慶一朗の腰を背後からタックルの要領で捕まえると、大げさな悲鳴じみた声が廊下に響く。 「離せ、筋肉バカ!」 「誰がバカだ!」  じたばたと子供のように暴れる慶一朗を引きずるようにジオラマ部屋に戻ったリアムは、床に落ちているプラスチック容器を手に取り、手書きの文字でピーナツバターと書かれているのを読み取ると容器を片手に振り返る。 「ケイ、これは何だ?」 「ん? マーサの店で売っていた添加物が一切入っていないピーナツだけを使ったピーナツバターだけど?」  美味いよなそれと、後ろめたさから一息で言い放った後に笑う慶一朗の顔に顔をずいと近づけたリアムは、まさかとは思うがこれをそのまま食ったのかと問いかけて色素の薄い双眸が左右に泳ぐ様を見守っているが、程なくして泳ぎ疲れたらしい瞳が窺うように上目遣いに見つめてくる。 「確か前に、ブラッドオレンジのマーマレードがあったからってそれだけを食っていたことがあったな?」  少し前の思い出すだけでゾッとするような光景を脳裏に浮かべたリアムがじろりと慶一朗を見れば、話を聞いてくれと言うようにじっと見つめて来る。 「だから、今日はそれだけじゃない、リアム。ちゃんとビールも飲んだ、から……」  慶一朗の言い訳じみた言葉-それはもはや無意識に煽っているとしか思えないものだった-にリアムが大きく息を吸い込んだかと思うと、作業テーブルの上に絶妙のバランスで立っていたジオラマの樹木が振動で倒れてしまうような大声で慶一朗の名を叫ぶのだった。
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