peanut butter.

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 リビングのソファでお気に入りの青い電話ボックス型のぬいぐるみを抱え込んでいる慶一朗の前、いつものように胡坐をかいて床に直接腰を下ろしたリアムがいたが、コーヒーテーブルの上にジオラマ部屋から持ってきたビールや水のボトル、ピーナツバターが入っていた容器やそれを食べた時に手を拭いたと思しきぐしゃぐしゃに丸められたペーパータオルを前に呆れたような溜息を零した為、慶一朗の肩がびくりと揺れる。  食に対する興味が薄い上に悪食とすら思える食生活について、付き合いだしてからさほど時間も掛けずに気付いたリアムだったが、まさか料理に使ったりパンに塗って食べると思っていたピーナツバターを摘みにビールを飲むなど想像もできなかった。  慶一朗に何故そんな暴挙-リアムにとっては暴挙としか思えなかった-に出たと問いかけたが、返ってきた答えにすぐさま頷けなかったのは、ひとえにリアムが常識人だったからだった。 「ピーナツを潰してペースト状にしているだけで元はピーナツだ、ピーナツならビールと一緒によく食べているだろう?」  慶一朗が精一杯の反論だと言いたげな顔で呟いた言葉にリアムは返事ができずに頭を抱えたくなったが、確かにピーナツをペースト状にしただけで添加物等は入っていない為、そのまま食べたとしても問題はないのかもと納得しかけ、ダメだと頭を左右に振って慶一朗の言葉に頷こうとする己を制止する。 「ケイ、ピーナツを食ってビールを飲むのは確かに悪くない」 「だろう?」 「でも、ピーナツバターとして加工してあるものを短時間で食べ尽くすのはどうなんだ?」  ナッツ類を一気に食べると腹を下すぞと己の患者である子供たちに諭すときと同じ口調で呟いたリアムの前、慶一朗がバスローブに包んだ体をもぞもぞとさせ、青いぬいぐるみを抱きしめる。 「……ビールだけを飲んで前に怒られたから冷蔵庫にあったピーナツバターを食っただけなのに……」  それなのに怒られなければならないのかと恨めしい声で詰られたリアムは、肺の中を空にするような溜息を零した後、まさかその二つを組み合わせるとは思わなかったと気分を切り替えたような顔で笑い、それを見た慶一朗の顔にも僅かに期待の表情が浮かぶ。 「……腹が減った時や作業の時に食べやすい物を冷蔵庫に作り置きしておくか」  だからこちらの常識を疑うような驚きの食べ方をしないでくれと眉尻を下げつつ笑顔で呟いたリアムは、青いぬいぐるみをソファに投げ捨てた慶一朗が両手を己に向けることで謝罪の意思を示したことに気付き、膝立ちになってその腕の中に体を押し込む。
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