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「……ドクター・フーバーは患者からもその家族からも評判が良いわ」
「そうか」
アナの言葉に軽く目を伏せて良かったと頷いた慶一朗は、子供から人気があるのは見ての通りよねと部屋の中央で子供相手に踊り出したリアムを指差し、奇特な人だと目を細める彼女の顔をちらりと見ると、得難い人と目元に笑みを浮かべられる。
「確かに得難い存在だな」
「ええ……ドクター・ユズがカフェでランチを食べる様になったきっかけだし?」
「あのカフェ、意外と料理が美味いんだな」
今まで栄養補助食品しか食べていなかったから分からなかったと肩を竦め、それに比べれば美味いという程度だけどと、素直な感想も口にする。
「食べる様になっただけマシかしら――踊らないの?」
「褒めてくれてありがとう、アナ。……今日は壁の花になっていようかな」
今日は自分が踊るよりも見ている方が楽しいと肩を竦め、じゃあ私は踊ってくると手を上げて他のスタッフらと同じ様に部屋の中央に向かうアナを見送った慶一朗だったが、ふと視線に気付いて顔を向ければ、アナが向かった場所からリアムが笑顔のままこちらを見ていて、軽く目を見張ればリアムが己に向けて手を伸ばす。
「ケイ、来いよ!」
お前も一緒に踊ろうと屈託無い笑顔で誘われ、周囲にいたスタッフや子供達が一斉に慶一朗を見つめる。
その視線に羞恥を覚える以上に心の中が喜んでいることに気付き、こほんと咳払いをすると待ちきれないと言いたげにリアムが大股に近寄ってくる。
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